著者
田村 英夫 穂積 啓一郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.149-155, 1971-02-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

ガスクロマトグラムで定量分析を行なう場合,装置がいかに正常に働き,正確なクロマトグラムが記録紙に描かれたとしても,自動積分計以外の方法で面積評価を行なうとクロマトグラムのピークの形が測定に適した条件を備えていないとあまりよい結果が期待できない.著者らは従来のマニアルな面積評価法より比較的簡単で再現精度のよい新方法を考案した.本法はクロマトグラムのピーク立ち上がり点からピーク頂点までの所要時間tとピークの高さhをパラメーターとするものであり,面積はh×tとして評価する.マニアルないろいろの方法による面積評価と成分量の関係を求め,これから最小二乗法による回帰直線を算出し,回帰直線からのばらつきを標準偏差として計算すると本法が最もすぐれた結果を与えた.同一操作条件においては,クロマトグラムのピークパターンは成分量により影響されないことから,h×tの値が成分量に比例することについて考察を行なった.またクロマトグラムのピークの曲線は簡単に正規分布,あるいはポアソン分布曲線として取り扱われることが多いが,著者らはそれらの分布曲線より,むしろLevenspielによる混合拡散モデルのほうが種々のピークに正確に一致することを確認した.本法は作図による面積測定の困難なシャープなピークからテーリングピークまで比較的広い範囲にわたって適用でき,将来は簡単な電子タイマーを用いる自動計測も可能である.
著者
穂積 啓一郎 北村 桂介 田中 喜秀
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.259-262, 1989
被引用文献数
2 2

酸素フラスコ燃焼法は,操作が簡便な特徴を有するが,塩素定量の場合,濾紙の汚染による誤差が問題であり,特に超微量領域で著しい.一方,カリウス湿式封管分解法は,加熱分解中爆発の危険があるうえ,分解後強酸が残留して定量操作に障害となりやすい.そこで,今回酸素を充たした小封管中で試料を完全分解し,この後塩化物イオンを電位差滴定する新しい超微量定量を試みた.1mg以下の試料を一端を閉じたガラス管に取り,管内を酸素で置換した後,開口端を針状に引き伸ばして封じた.これを580℃の電気炉で1時間加熱分解した後,吸収液を入れたビーカー中に針端部を押し付けて割り,浸入した吸収液に分解ガスを30分放置して吸収させて,封管内壁を洗浄し,0.001M硝酸銀-2-プロパノール標準液で電位差滴定を行った.本法を用いて諸種の標準物質の定量を行った結果,標準偏差として約0.2%が得られた.