- 著者
-
窪田 武浩
新宮 康栄
- 出版者
- 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
- 雑誌
- 日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.3, pp.184-187, 2021-05-15 (Released:2021-06-02)
- 参考文献数
- 8
症例は77歳,女性.冠動脈バイパス術を9年前に受けた.その後,外来フォロー中に大動脈弁狭窄症が出現,進行したため経胸壁心エコーで経過観察していた.経過観察中に僧帽弁後尖弁輪部の高度の石灰化と同部に付着し左室流出路にたなびく可動性のある疣贅様腫瘤が認められたため,腫瘤の摘出と大動脈弁置換術を行った.腫瘤は僧帽弁後尖弁輪部に基部を持つ3 mm×23 mmの棍棒様で容易に折れてしまうものであった.通常の組織染色に加え血管内皮細胞のマーカーであるCD31とvon Willebrand factorの免疫染色を施行したところ,両者ともが陽性であった.病理学的には薄い内皮に覆われた細胞成分を含まない石灰化物質と診断した.摘出した腫瘤は石灰化弁輪の剥離により生じたものであることが示唆された.石灰化弁輪に伴うとされるcalcified amorphous tumor(CAT) とは異なる稀な病態であったため,文献的考察を加えて報告する.