著者
坂口 一彦 立岩 誠 水谷 哲郎 宮武 博明
出版者
Japanese Society of National Medical Services
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.724-728, 1992

再膨張性肺水腫は, 気胸や胸水にて虚脱した肺を, 治療により再膨張させた後に生じる肺水腫であり, その発生は比較的まれとされてきた. しかし近年, 自然気胸の増加に伴い, 胸腔ドレナージを施行する際に, 医原性合併症としての本症の発生に注意を払う必要がある. 諸家の報告と, 自験例での特徴をまとめると, (1) 長期間の肺虚脱(3日以上)の症例に発生する. (2) 急激な肺の再膨張のあと数時間以内に発生するものが多いが, 部分的な再膨張過程においても出現をみるものがあった. (3) 従来は持続的陰圧吸引後に多いとされてきたが, 近年用いられるようになったフラッターバルブによる平圧脱気に際しても出現する可能性が高い. (4) 死亡例から, ほとんど自覚症状をしめさぬ軽症例もあり, 注意深い経過観察により, 本症の発生頻度は, 従来の報告以上に高い可能性をもつものと思われる.