著者
八木田 旭邦 竹内 教能 伊藤 久 北島 政樹 立川 勲
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.185-191, 1987-02-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
23

腎移植時の輸血が,免疫寛容を誘導し移植腎の生着率の向上に寄与している事が知られている,この事実は,悪性腫瘍の外科的切除の際の輸血が,免疫寛容を惹起し逆に腫瘍の再発並びに増殖を促進している可能性も示唆している. stage II以上の結腸癌根治手術51例(輸血例36例,非輸血例15例)並びに乳癌根治手術51例(輸血例24例,非輸血例27例)の輸血の有無による予後をKaplan-Meier法で比較した.結腸癌根治手術の輸血例の生存率は,非輸血例に比較して明らかに低下している(p<0.0001).乳癌根治手術の輸血例の再発率は,非輸血例と比較し有意に高かった.また,結腸癌非根治手術例でも輸血例の予後は,非輸血例に比べ明らかに低下していた.輸血量と予後との因果関係を検討したが,輸血量との相関は得られなかった.この事実から手術前後の輸血が結腸癌並びに乳癌の予後不良因子として作用しており,輸血量との相関がない事から輸血の有無そのものが重要と考えられた.
著者
八木田 旭邦 立川 勲
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.446-450, 1987-04-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
20

Behçet病は,病因不明の難治性の疾患である. Behçet病の副症状の1つである腸型Behçetは,神経型あるいは血管型と同様にBehçet病の死因の大部分を占めている. 今回, Behçet病33例のHuman leukocyte Antigen (HLA)の特異性を検討し,更に,腸型Behçet 19例と腸炎を合併しない非腸型Behçet 14例とのHLAの相異を検討した.また,潰瘍性大腸炎170例およびクローン病47例のInflammatory bowel diseaseのHLAと腸型Behçetのそれと比較した. Behçet病ではA31, B51, DR4と有意の相関が見出された.腸炎の有無による検討で,腸型Behçetは非腸型Behçetに比べA31, DRw8, DRw52が有意に低下していたが, DR4とB51は両者で健常者310例に比較して有意に高率であった.腸型BehçetのHLAはB51とDR4に相関し,潰瘍性大腸炎はA24, Bw52, DR2, DQw1と相関し,クローン病は, A31, Bw61, DR4, DRw53, DQw3と相関し,それぞれの特異性が見出された.