著者
平林 茂 中西 敏 立野 治雄 三宅 裕昭 平澤 忠
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.350-358, 1984-05-25
被引用文献数
12

前報でその組成について報告した加熱重合レジン9種, ヒートショックレジン3種, 流し込みレジン6種および常温重合レジン1種の計19種の義歯床用レジンの可塑性, 曲げ強さ, 弾性係数, たわみ, 衝撃強さ, 吸水量, 溶解量および色調安定性などの物理的性質を測定し, 比較検討した.全体的にみて, 重合条件の物性に及ぼす影響は大きく, 加熱重合レジンは流し込みレジンおよび常温重合レジンに比較して曲げ強さ, 衝撃強さが高い.ヒートショックレジンは, ほぼその中間の性質を示す.しかし, 架橋剤として1, 4-ブタンジオールジメタクリレートを含有する流し込みレジンの1種は, 他のトリメチロールプロパントリメタクリレートを架橋剤として含有する流し込みレジンに比較して, 従来の加熱重合レジンに匹敵する程度の良好な機械的性質を示す.耐衝撃性レジンは確かに高い衝撃強さを示すが, 反面, 曲げ強さは低く, たわみも大きい.加熱重合レジン中, 餅状期間が長く, その液に架橋剤として21%の1, 3-ブタンジオールジメタクリレートを含する材料は, 最高の抗折たわみ性を示すが, 衝撃強さは低い.流し込みレジン中, その液に親水性モノマーの2-ヒドロキシエチルメタクリレートを約10%含有する材料は, 吸水性が高く, その結果曲げ強さの低下を来した.従来の圧縮成形法に対し, 射出成形法の硬化したレジンの物理的性質に及ぼす効果は特に認められない.