著者
野々内 裕紀 眞継 賢一 伊藤 博美 大橋 直紹 端野 琢哉 濱口 良彦
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.46-50, 2023-02-28 (Released:2023-02-28)
参考文献数
10

80歳代,女性。2週間前からの動悸と胸痛が改善しないため当院の救急外来を受診し,発作性上室頻拍に伴う急性心不全の診断で入院となった。入院時の血液検査でクレアチンキナーゼ(CK)が6,259IU/Lの高値を示し,推算糸球体濾過量(eGFR)は入院3週間前の62.5mL/分/1.73m2から入院時24.6mL/分/1.73m2まで低下しており,尿中ミオグロビンは87.0ng/mLと高値であった。ICU入室後にアトルバスタチン(ATRC)とシクロスポリン(CyA)の併用が確認され,薬剤性横紋筋融解症による高CK血症および腎機能低下と診断された。 ATRCはCyAとの併用によりAUCが8.69倍に上昇することが報告されており,両剤の併用によるATRCの血中濃度高値が薬剤性横紋筋融解症の原因であったと考えられた。ATRCの中止と輸液負荷により退院時にはCK 259 U/L,eGFR 73.2mL/分/1.73m2に回復した。ATRCとCyAの併用は禁忌ではないが,ATRCの血中濃度を著しく上昇させ,薬剤性横紋筋融解症の発症リスクを高める恐れがある。
著者
野々内 裕紀 眞継 賢一 時田 良子 三木 寛之 中井 秀樹 伊藤 博美 喜多 亮介 大橋 直紹 端野 琢哉 濱口 良彦
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.781-790, 2021-12-28 (Released:2021-12-28)
参考文献数
8

薬剤師の集中治療室定数配置薬の在庫管理業務による経済効果は十分に明らかにされていない。そこで,われわれは定数の過不足・破損が報告された薬剤数および損失金額について薬剤師が集中治療室に常駐する前(2016年9月1日〜2018年8月31日)と後(2018年9月1日〜2020年8月31日)を比較して,定数配置薬の管理状況が改善するのかを調査した。 定数の過不足・破損が報告された薬剤数は薬剤師常駐後に329個から229個まで30.4%減少し,損失金額は192,910円から110,090円にまで42.9%減少した。ヒューマンエラーによる破損よりも管理状況に由来する定数の過不足を理由に報告された薬剤数が著しく減少した。薬剤師が集中治療室において定数配置薬の在庫管理業務を開始した後は,定数配置薬の管理状況が改善し,薬剤の定数不足や破損による経済的損失が減少した。
著者
木下 喬公 端野 琢哉 矢部 光一郎 藤原 周一
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.655-659, 2016-11-01 (Released:2016-11-01)
参考文献数
15

単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus, HSV)感染症では多彩な症状が発現するが,その中の肝炎が劇症化することは稀である。今回我々は,HSV感染から劇症肝炎・ウイルス関連血球貪食症候群に陥った一例を経験したので報告する。症例は26歳,女性。発熱・全身倦怠感を主訴に,他院に急性肝炎の診断で緊急入院した。肝機能障害が改善せず,加療目的で当院消化器内科に入院となり,翌日,全身管理目的にICU入室となった。入室時,身体所見および血液検査所見より劇症肝炎,血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome, HPS),DIC(disseminated intravascular coagulation)と診断し,血漿交換療法・ステロイド大量療法・免疫抑制療法を開始した。ウイルス抗体検査および肝生検の免疫染色の結果でHSV感染によるものと診断し,抗ウイルス薬投与も追加した。以上の治療が奏功し,入室後13日目にICU退室となった。HSV肝炎の劇症化は稀ではあるが,治療の遅れは予後に影響を与える。HSV劇症肝炎が疑わしい場合には,早期に生検を考慮することも必要である。