著者
高島 健太郎 西垣 朋哉 渡邉 汐音 竹下 智之
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.12-23, 2021-04-15 (Released:2021-05-15)
参考文献数
38

企業にとって,従業員の組織コミットメントを高め人材を定着させることは重要な課題である.一方,従業員の側では,自律的なキャリア開発への意識の高まりから,様々な種類のスキル開発あるいは副業などの第二の仕事を本業と並行して行いたいという気運が高まっており,企業は対応を迫られている.本研究では,このような所属企業の業績への貢献を志向しない従業員個人による自発的なキャリア開発活動を「本業外のキャリア開発活動」と定義し,その意欲と組織コミットメントとの相関を分析した.20代,30代の若手従業員を対象とした2つの質問紙調査を行い,本業外のキャリア開発活動への意欲の背景要因として「自己研鑽」「社外の仕事への従事」「社会貢献」の3つの因子を抽出した.相関分析を行ったところ「社会貢献」因子にのみ組織コミットメントとの弱い相関があること,それ以外の因子には相関がないことが示された.さらに,組織コミットメントは,従業員のこれらの活動への意欲より,むしろ企業がこれらの活動に対して示す肯定的態度と関係があることが示唆された.得られた知見は,今後増えると思われる従業員の本業外のキャリア開発活動に対して,企業が方針策定を行うにあたり有用であると考える.