著者
吉田 佳絵 高野 研一
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.1-20, 2018-04-15 (Released:2018-05-15)
参考文献数
27
被引用文献数
4

現代企業は,不確実性が高まる経営環境の中で業績の向上を図るため,様々な施策を進めている.本稿では,こうした企業の試みを効果に結びつける手段の一つとして組織風土に着目した.組織風土に関する質問紙を設計し,組織風土の尺度が4つの因子「会社方針の明示」「職場の良好な雰囲気」「個人の主体的な態度」「職場の無秩序さ」から構成されることを確認した.共分散構造分析において,「会社方針の明示」からパフォーマンス(回答者による自己評価)に有意な正のパスが認められ,「会社方針の明示」はパフォーマンス向上に寄与する重要な要素となることが示された.ただし,パフォーマンスに対する他の因子からの影響については,調査対象によって異なることが示唆され,今後さらなる検討が必要であることが指摘された.
著者
高島 健太郎 西垣 朋哉 渡邉 汐音 竹下 智之
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.12-23, 2021-04-15 (Released:2021-05-15)
参考文献数
38

企業にとって,従業員の組織コミットメントを高め人材を定着させることは重要な課題である.一方,従業員の側では,自律的なキャリア開発への意識の高まりから,様々な種類のスキル開発あるいは副業などの第二の仕事を本業と並行して行いたいという気運が高まっており,企業は対応を迫られている.本研究では,このような所属企業の業績への貢献を志向しない従業員個人による自発的なキャリア開発活動を「本業外のキャリア開発活動」と定義し,その意欲と組織コミットメントとの相関を分析した.20代,30代の若手従業員を対象とした2つの質問紙調査を行い,本業外のキャリア開発活動への意欲の背景要因として「自己研鑽」「社外の仕事への従事」「社会貢献」の3つの因子を抽出した.相関分析を行ったところ「社会貢献」因子にのみ組織コミットメントとの弱い相関があること,それ以外の因子には相関がないことが示された.さらに,組織コミットメントは,従業員のこれらの活動への意欲より,むしろ企業がこれらの活動に対して示す肯定的態度と関係があることが示唆された.得られた知見は,今後増えると思われる従業員の本業外のキャリア開発活動に対して,企業が方針策定を行うにあたり有用であると考える.
著者
水山 元 鎌田 瑛介
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.330-341, 2008
参考文献数
34
被引用文献数
3

本論文では,過去の実績から何らかのパターンを抽出し,それを未来に外挿する従来型の需要予測手法とは一線を画した,需要予測の新しい手段として,複数の人間が持っている需要に関する分散した知識を,市場メカニズムを用いて集約し,予測に反映させる「衆知集約型需要予測法」を提案する.連続的な需要多測分布を得るための予測証券と,その証券の流動性を確保し,市場の平衡状態を実現するためのマーケットメーカをそれぞれ展開し,それらを,市場メカニズムを用いた将来予測のフレームワークである「予測市場システム」に組み込むことによって「衆知集約型需要予測法」の基本設計を与えるとともに,その機能をエージェントシミュレーションによって確認する.
著者
辛島 光彦 西口 宏美
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.29-40, 2012-07-15 (Released:2017-11-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究では,モーツァルトエフェクトに代表される作業前の音楽聴取が知的作業に与える影響に着目し,知的作業として単純繰り返し作業を取り上げ,作業者が自らやる気が向上すると期待できる音楽を作業前に聴取することにより,作業者のポジティブな感情状態が高められ,作業のパフォーマンスが向上するという,作業前音楽聴取の有効性について実験を通じて検討した.実験は12名の被験者にドイツ語の転記作業を,他の16名にフランス語の転記作業を,さらに他の16名に心的回転作業を,作業前の音楽聴取の有無の条件においてそれぞれ行わせた.実験の結果,作業によらず作業前に音楽聴取を行った場合の方が音楽聴取を行わない場合と比較し,被験者のポジティブな感情状態が有意に高くなり,作業によらずパフォーマンスも有意に向上することが示され,単純繰り返し作業における作業前音楽聴取の有効性が示唆された.
著者
坂巻 英一 亀井 悦子
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.39-50, 2014 (Released:2014-05-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1

2011年3月11日に発生した東日本大震災では,停電により通信手段が途絶する中,Twitterを始めとしたSNSが情報伝達手段として力を発揮した.Twitter上では,どこで誰が助けを求めているのか,今,何が不足しているのか,といった情報が被災地から次々に発信され,こうした情報を基に行政や自治体は,被災地で起きていることをリアルタイムに把握することができた.一方で,Twitter上には嘘やデマ情報も多く,情報の解読の多くは手作業により行われた.そのため,状況の把握に手間や時間が掛かる,といった課題も指摘されていた.本研究ではInformation Valueや単純ベイズ分類器を用いて,つぶやきデータを分析し,つぶやきの中から震災と関連のあるキーワードを機械的に抽出する手法について提案する.そして,キーワードを基に被災地の現状をリアルタイムに把握することが可能であることを示す.併せて,本研究で使用する単純ベイズ分類器と古典的な分類アルゴリズムであるSVMを比較することにより,つぶやきの分類においては,単純ベイズ分類器はSVMと同程度の分類能力があることを検証実験により実証する.
著者
古谷野 英一
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.104-110, 1984

本研究は作業者の脈拍速度曲線を先行指標として, その変化から事務ミスの発生を予知することのできる方法開発の基礎研究である.本報ではとくに脈拍速度曲線と事務ミス曲線との相関関係が成立するための要因と, 相関係数の正負の発生構造を解明することを目的した.本報では被験者40名, 実験延時間400時間, 393回の英文タイプと電卓計算作業における打鍵ミスの実験を行った.実験結果の解析から, (1)両曲線間には統計的に有意な相関関係が存在するとともに脈拍先行差が存在する, (2)脈拍先行差は両極線の相関関係の正負発生に強い影響をもつ, (3)脈拍先行差は作業種別に影響を受けないが性別にやや受ける, (4)脈拍速度曲線に変動係数を用いた場合のほうが算術平均値を用いる場合より脈拍先行差の特性が現われやすい, (5)脈拍先行差には個人別恒常性が存在しない, (6)両曲線の相関係数の正負は作業者の作業開始時点と肉体的条件に影響を受ける, などのことが解明された.
著者
斎藤 倫克 後藤 正幸
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.145-154, 2008-06-15 (Released:2017-11-01)
参考文献数
37

近年,初期投資の不要なインターネットビジネスとして,アフィリエイトが注目されている.しかし,アフィリエイターの約半数が月1,000円未満の収益しかあげられていないという現実がある.これは,継続的なアフィリエイトビジネスの発展を阻害するため,何らかの対策を講じる必要があろう.そのため,収益性の高さから書籍に紹介されるほどの優良アフィリエイターが,どのような方法でサイトを構築,運営しているかを分析し,優良なサイトを構築するための指針を得ることが望まれる.しかしながら,そのようなサイト運営ノウハウを体系的に分析し,理解し易い形で結果を提示する手法は確立していない.そこで本研究では,優良アフィリエイトサイトの特徴を分析し,サイト構築と運営に有効となる情報を提示するため,(1)サイト構築と運営における優良アフィリエイターのノウハウをインタビュー文章から構造化し,重要なポイント(検証要素)を抽出するための手法を提案する.(2)既存の優良アフィリエイトサイトについて,個々のサイトの特徴を明確にするため,アフィリエイトサイト用の調査項目作成方法を提案する.これら2つの側面からのアプローチにより,アフィリエイトサイトの構築と運営に役立つ分析の方法論を確立する.加えて,実際に検証要素と優良サイトの特徴分析結果を示し,本稿の提案手法の有効性を示す.
著者
石井 智之 熊谷 敏 大場 允晶
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.249-259, 2015 (Released:2015-03-10)
参考文献数
21

近年の低成長期において価格競争が激化し,単一のコスト変動要因にのみに着目して,限界利益のみを見る経営が困難になりつつある.また,市場環境の変化に対して製品のコストや損益がどのように変化するかを迅速に把握する必要がある.本研究ではプロセスモデリングをコスト計算に応用し,市場環境の変化に即応して,製品のコストや損益を構造的かつ詳細に把握できるコスト管理方法を提案する.  プロセスモデルでは,コスト変動要因毎に,トランザクションと呼ぶアクティビティの集合を定義する.そして材料費,設備費などのコストをアクティビティ毎に把握する.そしてプロセスモデルをコスト構造マトリックスに変換し,市場環境変化を与えたときのコストと損益の算出方法を明らかにする.これにより経営状況の変化に対応でき,数値的な根拠を意思決定の際に与えるコスト管理モデルを提供する.
著者
長嶋 利治 新里 隆 郭 偉宏
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.557-560, 2014 (Released:2014-03-05)
参考文献数
5

Electric vehicles are regarded as eco-friendly automobiles. However, there are several obstacles preventing their widespread use. One of the most important and difficult issues is the rechargeable battery. To analyze this problem, we model the facility location problem of a quick electric recharging station for electric vehicles based on the combinatorial optimization problem and derive the optimal location solution using mean field approximation developed in statistical physics. Moreover, our proposed algorithm is validated using numerical experiments.
著者
増田 浩通 菊池 晋矢 新井 健
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.128-144, 2009
参考文献数
21
被引用文献数
1

本研究は,消費者の購買意欲を誘い売り上げの向上を見込める小売店舗レイアウトをマルチエージェントシミュレーション(MAS)により分析・検証することを目的とする.研究対象としてドラッグストアを取り上げる.まずエージェントの購買行動が現実に近い状態を再現するよう店舗内空間行動モデルを作成し,現実の売り上げデータを用いて各パラメータの調整をする.さらに店舗レイアウトのうち次の3要因 1.購買時点広告(POP)の設置場所, 2.広告日替り商品置き場, 3.商品棚レイアウトに着目し,消費者の店内購買行動と店舗レイアウトの影響効果をMASにより分析し,売り上げがどのように変化するかをシミュレーションをする.最後にシミュレーションした結果と顧客アンケートを比較することで,シミュレーションの妥当性の検証を試みる.
著者
大宮 望 山本 久志 大場 允晶 丸山 友希夫 中邨 良樹
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.92-99, 2016 (Released:2016-09-07)
参考文献数
13

近年,情報システムは企業にとって経営上,なくてはならない存在となってきている.情報システムの保守工程は,開発工程より費用が多く掛るといわれており,経営課題の一つとなっている.その原因の一つに,バグに関係する問い合わせがある.この問い合わせは,発生することを予測することが出来ないため,準備が出来ずに対応に多くの時間を要する.バグに関係する問い合わせが発生する要因については,様々な研究がなされているが,明確な分析はなされていない.そこで本研究では,バグに関係する問い合わせの内容,時間及び件数をクラスタ分析し,考察することによって,その発生要因を明らかにする.これをもとにバグに関する問い合わせの発生を,予測するモデルを提案する.これに加えて,予測モデルを実現場で利用するために「情報提供シート」も合わせて提案する.
著者
西口 宏美 辛島 光彦 齋藤 むら子
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.137-144, 2008
参考文献数
19

本研究は,地域社会において提供される社会資源を要介護者のニーズに対応可能なものとして整備していくための指針を得るために,通所リハビリテーションで提供される介護とリハビリテーション・サービスに対する利用者の満足度と利用時のwell-being感について把握することを目的としている.介護老人保健施設で提供される通所リハビリテーションの利用者59名を対象に,提供されているサービスに対する満足度と利用時のwell-being感に関する調査を行ったところ,以下のような結果が得られた.(1)利用者は,提供されるサービスについて概ね高い満足感を抱いており,その中でも特に入浴介護に対する満足度が高かった.また,男女間で満足度の異なるサービス項目がみられ,特にコミュニケーション活動においては女性群の方が高い満足度を示した.(2)サービス利用時の well-being感においては,性差や他の利用者との人間関係により差異が見られ,女性群ならびに人間関係に満足と回答した群においてwell-being感が高かった.以上の結果より,要介護者のニーズを満たすためには,介護サービス利用者の性差や他の利用者との人間関係について十分配慮し,きめ細かいサービスの提供が必要であると考えられる.
著者
青木 洋貴
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.247-256, 2007
参考文献数
17

本研究は,高度な認知・精神作業であるとともに,審美的な観点も重要となるような印刷広告制作作業に対して,IE的なアプローチの有効性を示すことを意図し実施している.本論文では,このような印刷広告制作作業のうち,特に広告レイアウト作業に着目している.IEの基本となるタスク分析をここで実施するために,観察されるアクションならびにプロトコルデータを用いることで適切に記録するためのタスク記述方法を提案している.さらにこの記述に基づき,作業遂行にあたってのデザイナの創造性診断に向けた基本的な考え方ならびに実施手順についても提案する.一連の方法を熟練したデザイナを用いた印刷広告制作実験により得られたデータに対して,ここで提案する方法を試験的に適用した.この適用から,デザイナの作業における進行・停滞状況の把握が可能であること,および定量的な評価が可能となることを示した.
著者
荒木 匠平 小村 亜唯子 平井 裕久
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.15-26, 2022-04-15 (Released:2022-05-15)
参考文献数
21

国内旅行情報サイトを分析対象として,ホテルの口コミに対してテキストマイニングを行い,口コミ内容とランキングとの関係を明らかにすることを目的とする.そのために,口コミの文章データに対してLDA(Latent Dirichlet Allocation)モデルに基づく潜在意味解析を行い,口コミ内容に関する変数(トピック指数)を作成した.そして,トピック指数を説明変数,ランキングを目的変数とする重回帰分析を行った.結果として,口コミデータから3つの内容(風呂・温泉,清潔さ,ウイルス感染対策,スタッフ対応,家族との食事)が抽出され,それを基に5つのトピック指数を作成した.そして,ランキングに対して,「ウイルス感染対策」「スタッフ対応」「家族との食事」のトピック指数が統計的に有意な正の影響があることを明らかにした.
著者
紀 永儒 柳川 佳也 宮崎 茂次
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.297-305, 2010-02-15 (Released:2017-11-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

病院の外来患者待ち時間を短縮するために,本研究では,待ち行列理論を用いたイベント駆動型ネットワークの方法を利用する.そのため,まずは対象になる病院の診療科の待ち行列全体をイベント駆動型ネットワークモデルで構築し,病院の総合受付の到着分布とサービス分布のモデルはM/G/sとする.次に,患者歩行速度を所与とし,診療科間の距離に比例して診療科間の患者の移動時間を決めた上で,患者の期待滞留時間と期待サービス時間に基づく割振りディスパッチングルールを提案する.その後,患者が次に受診しうる診療科の窓口が複数ある場合とない場合,さらに複数のとき,それらの診療科の窓口が空いている場合と空いていない場合に対して,提案ディスパッチングルールによって患者をスケジューリングする.最後に数値実験を通して,患者の総待ち時間への提案の効果を検証する.
著者
鈴木 佐俊 小林 学 後藤 正幸
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.63-76, 2023-07-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
29

家庭用電力消費量データには世帯単位の生活スタイルの情報が含まれており,耐久消費財や世帯向けサービスのマーケティングに有用な情報である.しかし一般的に電力消費量はスマートメータで主幹電力のみが検針されており,家電製品の稼働状態は推定する必要がある.従来ディスアグリゲーション技術を用いて各家電製品の電力消費量を推定する試みはいくつか研究されているが,追加センサが必要になるなど実用上はコスト面の問題が存在した.これに対し,本研究ではマーケティング用途に特化した世帯属性情報として観測された主幹電力データから家電製品の稼働・非稼働を推定することに特化した問題を定型化し,混合正規分布を用いてスナップショットでの状態推定モデルを提案する.またシミュレーション実験により,提案モデルが実用上有効な正解率を有していることを示すとともに,推定のインプットとなる機器状態の事前確率分布と提案手法との関係性について示す.本モデルは追加センサを必要としない,低いコストでマーケティングに利用可能な世帯のエネルギー消費傾向情報を得る世帯属性の推定方法であり,エネルギー事業者にとって世帯を対象とした省エネ推進等の施策のための基礎情報として活用が期待できる.
著者
柿本 陽平 大前 佑斗 豊谷 純 原 一之 高橋 弘毅
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.77-89, 2023-07-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
20

2021年9月現在,COVID-19が世界的に流行し日本の外食産業においては,店舗の営業形態が強く制限されている.多くの飲食店はガイドラインに従った感染予防対策を講じており,特に顧客同士の物理的距離が保てるような座席表を作成する,という手法がよく見られると思われる.しかし感染リスクを削減する座席割当は,店内の混雑状況により常に同一とは限らない.そこで本研究は,店舗運営者が感染リスクを単一のパラメータθにより定量的に調整することができる座席割当モデルを提案する.パラメータθは店舗内の空間全体に対する感染リスクの閾値となる.提案したモデルを仮想の飲食店に適用した結果,店舗の収益損失を減らしつつ感染リスクの削減効果が期待できること,単一のパラメータにより感染リスクと収益を調整できることが確認された.
著者
山本 久志 浜田 康平 長塚 豪己
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.218-225, 2009-10-15 (Released:2017-11-01)
参考文献数
16

ある試行列において,同じ結果がk回またはk回以上連続して発生したものをオーダーkの連と呼ぶ.本論文では.s種類の結果を有するn回の試行におけるオーダーkの連の数の確率分布について考える.連を数える方法として4種類のカウント方法が提案されているが,本論文では,オーバーラップを許さない場合(TYPE I)にオーダーkの連の数の確率分布を効率的に計算するための算出方法を提案する.そして,提案した算出方法の効率性の評価のために計算時間オーダーを求め,さらに数値実験により全数列挙法と計算時間の比較を行う.その結果,本論文で提案する算出方法が,特に試行回数nが大きなシステムにおいて効果的である事を示す.
著者
渡部 和雄
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.1-11, 2015 (Released:2015-06-15)
参考文献数
32

電子書籍は多くの利点を持つが,現状では出版物市場の1割以下を占めるに過ぎない.そこで,電子書籍の利用促進の示唆を得ることを研究目的とした.電子書籍利用とインターネット利用の親和性の高さに着目し,まずは消費者の電子書籍や情報受発信に対する意識や行動について質問紙調査を行った.そして,回答の探索的因子分析を行ったところ,電子書籍の長所・短所,ネットで情報収集・発信など7つの因子が抽出された.検証的因子分析を経て,構造方程式モデリングを用いて,消費者の電子書籍利用意向モデルおよび電子書籍利用頻度モデルを構築した.これらのモデルを基に,電子書籍事業者向けに消費者の電子書籍利用を促進する方策を提案した.
著者
加藤 拓巳
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.12-23, 2020-04-15 (Released:2020-05-15)
参考文献数
52

再購入率を高めることは,企業の効率的な利益に貢献する.したがって,その要因を特定し,効果的に投資することが重要である.しかし,多様な企業活動や顧客との接点を横断的に評価した事例は少ない.本研究では,自動車業界の企業・商品・販売会社の観点から,再購入意向に寄与する要因を共分散構造分析で評価した.その結果,販社スタッフの魅力が最も効果的であり,次いで商品の魅力,企業ブランドイメージが寄与することが明らかになった.企業において,プロジェクト数が増大し,大きな負担になるケースが散見される.各部門から上がってきたプロジェクト計画の優先順位を全社的な視点で概算的に判断できる基準を持つことは有益である.