著者
竹下 裕俊
出版者
学校法人 尚絅学園 尚絅大学研究紀要編集部会
雑誌
尚絅大学研究紀要 A.人文・社会科学編 (ISSN:21875235)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.49-57, 2023-03-31 (Released:2023-08-04)
参考文献数
12

本稿は,拙論「“The Short Happy Life of Francis Macomber” における登場人物の指示表現について」(2020)及び「登場人物の指示表現に見るヘミングウェイ作品―「医者と医者の妻」を中心に―」(2021)に続く,筆者のヘミングウェイ作品における登場人物の指示表現研究の一環である。今回は,短編集『われらの時代に』(In Our Time, 1925)から作家の代表作の一つである「季節はずれ」(“Out of Season”)を取り上げ,これまでと同様,言語学的文体論の立場から分析を試みた。作品の主な登場人物は,鱒釣りのガイド役のペドゥッツィと若い夫婦である。物語から読者が感じるこれらの登場人物たちの心理的距離感や不調和感には,作家による指示表現の巧みな選択と配置が不可欠な役割を果たしていることが分かった。