著者
竹下 香寿美
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は,様々な周期で運動を行わせたときの筋線維と腱組織の長さ変化及び関節角度との関連について異なる負荷条件下において検討した.被検者は,健康な成人男性7名(平均23.1、±2.4歳,身長170.8±6.6cm,体重64.9±9.2kg)であった.踵を上げた状態から踵を下げ,その後すばやく元の位置に戻すという足関節底屈〜背屈〜底屈という一連の動作を連続して行わせた.運動はすべて角度を変化させることができるスレッジ台上で行い,運動時の負荷条件を変化させるために床面とスレッジ装置の角度は30°または60°となるように設定した.被検者が足を載せる部分に床反力を測定するためのフォースプレートを設置した.運動周波数は,1Hz,2Hz,3Hzとし,運動の頻度を規定するためにメトロノームの電子音に運動を合わせるように指示した.床反力と同時に足関節及び膝関節角度変化を測定するために被検者の右側方よりハイスピードカメラで撮影した.また,超音波診断装置を用いて運動中の腓腹筋内側頭の超音波縦断画像を取得し,筋束長,羽状角を計測した.腓腹筋内側頭,腓腹筋外側頭,ヒラメ筋,前脛骨節より表面筋電図を導出し記録した.本研究の結果,運動時の筋-腱複合体の長さ変化に対する筋束長の長さ変化の割合は,スレッジ台30°試行では,1Hzに対して2Hz,3Hzともに長さ変化の割合が低くなり(p<0.05),一方,スレッジ台60°試行においては運動頻度が高くなるにつれて長さ変化の割合が有意に小さくなった(1Hz vs 2Hz:P<0.05,2Hz vs 3Hz:P<0.01)ことから,周期的な運動を様々な頻度で実施する場合,筋-腱複合体の働き,すなわち,筋の力発揮及び腱組織の弾性体としての働きの兼ね合いは,運動時の負荷条件が異なることにより至適に働く周波数が異なることが示唆された.