著者
竹中 勇貴
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.1_246-1_266, 2020 (Released:2021-06-16)
参考文献数
61

通説的に、議員とは別個に公選される執政長官 (大統領、知事など) は、望む政策を立法によって実現することに苦労しデッドロックに直面しがちであるとされてきたが、執政-議会関係についての近年の研究は、執政長官がポーク・バレリングによって議員の支持を取り付けるという形で議員に影響力を行使し、立法に成功しうることを明らかにしてきた。しかし先行研究では、執政長官の選挙前連合、つまり執政長官の選挙において同じ候補を支持する議員や政党の連合がポーク・バレリングによる執政長官の影響力行使や立法の成功をどのように左右するかについての分析は不十分である。 そこで本稿は、執政長官たる知事が公選され、様々なパターンの選挙前連合が存在した1991年から2005年までの日本の都道府県をケースとして、合理的選択理論による仮説構築と計量分析によって、知事は、選挙前連合が拡大するほど自らの再選を議員に依存するようになり、議員と協調的な関係を築くためにポークを増加させ、立法に成功していることを明らかにする。さらに、因果媒介分析によって、選挙前連合はポークを媒介して立法の成功をもたらすことも示す。