著者
竹井 瑤子 井奥 加奈
出版者
大阪教育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

包装による食品の劣化防止法は、近年の工業技術の進展による多機能を有する包装資材の開発により利点が多い重要なものとなった。反面、これらプラスチック類のごみ問題も放置できないものとなった。そこで、食品に求められる包装材の機能を食品学の立場から見直し、食品の品質低下を抑制できる最小限の機能を持ち再生しやすい包装資材を検討する基礎的データを得る事を目的とした。包装により遮断可能な劣化要因のうち透明プラスチックフィルムが遮断しにくい光に着目し、劣化作用が大きい紫外線が食品の品質に及ぼす影響を検討した。脂質モデルとしてリノール酸メチルを用い、3種の波長の紫外線を照射し生成した過酸化物を高速液体クロマトグラフィーで分離、定量した。その結果、波長が短い程、過酸化物の生成も分解も速いことが分かった。次に、β-カロチン、ヘモグロビン、クルクミン、インジゴカ-ミンに対し脂質と同様の紫外線照射実験を行い退色度を測定したところ、カレ-粉の色素クルクミンは365nmの紫外線でも退色がみられ、波長が短い程退色が激しかった。そこで、クルクミンの退色に対し、365nmの紫外線をカットする機能があるフィルムの防止効果を検討した。その結果、365nmの紫外線に対する退色防止効果が明かとなったが、蛍光灯のもとでは、効果が見られなかった。更に、実際の食品として匂いが大切なすりごまを取り上げ、4種のフィルムで包装して1カ月間保存し、ガスクロマトグラフィーにより香気成分を分析し、含有脂質を超音波をかけて抽出後その過酸化物価を測定した。アルミラミネートフィルムでは品質保持効果が最も高く、365nmの紫外線カットフィルムでは異臭成分の生成防止効果が見られ、酸素遮断フィルムでは脂質酸化防止効果が見られた。