著者
轟 英伸 畑野 昭夫 阿部 裕司 竹内 伸夫
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1641-1650, 1996

紙の寸法安定性をオンラインで予測する計測システム (ウェッブ収縮率計) を開発した。今回開発したシステムは, エッジセンサーとして非接触型のレーザー外径測定器を移動ステージ上に配置した, 紙幅計測ユニット2組より構成されている。この2組のユニットを抄紙機の乾燥工程前後に取付けることにより, 収縮前後の紙幅から製紙工程におけるウェッブ収縮率を計測できる。さらにウェッブ収縮率と製品の浸水伸度や操業条件との関係を調査して以下の知見を得た。<BR>抄紙条件 (原料処方, 濾水度, J/W 比等) が種々異なる製品の浸水伸度 (寸法安定性) とプレドライヤー前からアフタードライヤー後までのウェッブ収縮率に高い相関関係が認められた。したがって, この相関関係を用いたウェッブ収縮率のオンライン計測により, 製品の寸法安定性を抄造段階で予測できる。<BR>抄紙機上において, ドローにより歪み率を1%増加させると, ウェッブ収縮率はポアソン比的な効果により約0.3%増加した。このドローによる収縮は, ワイヤー~ウェットプレス間の紙中水分80%付近では製品の寸法安定性にほとんど影響しないが, サイズプレス~アフタードライヤー間の紙中水分40%付近では寸法安定性を悪化させた。<BR>ドローを増加して, 歪み率を大きくすると, CDの剛度は低下した。また, ワイヤー~ウェットプレス間よりサイズプレス~アフタードライヤー間の方がドローの増加に対する剛度低下の割合が大きかった。<BR>J/W 比の変更により, 繊維をより縦配向にすることでウェッブ収縮率が増加し, 浸水伸度の悪化とCD剛度の低下が認められた。<BR>また操業中のオンライン計測事例として, J/W 比やサイズプレス液付着量の変化に伴う紙幅やウェッブ収縮率の変化挙動を紹介する。