著者
竹内 彰継
出版者
米子工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は市販の光学機器だけを用いて安価に太陽の彩層の速度場を観測する望遠鏡を製作し、それを太陽プロミネンスの振動・波動現象の研究などに利用することにある。本望遠鏡は口径8cmの屈折望遠鏡の後に半値幅0.3AのHαフィルタと冷却CCDカメラを取り付けたもの3本を同一架台に搭載したものから構成される。Hαフィルタは設定温度を変えると透過波長帯をずらすことができるので3本の望遠鏡でHα線の線中心、短波長側ウィング、長波長側ウイングの光の強度を観測し、Hα線のドップラーシフトの2次元情報を得て、彩層速度の2次元分布図を作ることができるというのが本望遠鏡の特長である。次に、望遠鏡の性能の検定を行うため国立天文台三鷹キャンパスの分光器を利用してHαフィルタの分光・温度特性の測定を行い、各フィルタの波長λ(A)-温度T(℃)関係を求めた。続いて、京都大学理学研究科附属花山天文台のシーロスタットと水平分光器を利用してHαフィルタの透過波長帯のムラの有無を調べ、ムラの影響はほとんど無く精度良く太陽彩層の速度場が測定できることを示した。最後に、太陽表面上のジェット現象「サージ」や太陽表面に新しい磁束演浮き上がってくる「浮上磁場領域」の観測を行い、速度分布の2次元分布図(ドップラーグラム)を製作した。また、2006年11月9日の水星の日面通過を観測し、そのとき太陽面上に存在した黒点の温度の精密測定を行った。太陽プロミネンスの振動の研究については、本研究期間では充分なデータが蓄積できなかったが、今後とも本望遠鏡で研究を継続しその物理の解明に寄与して行きたい。