著者
布施 圭司
出版者
米子工業高等専門学校
雑誌
米子工業高等専門学校研究報告 (ISSN:02877899)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.54-61, 2003-12

ヤスパースは「非対象的思惟」ないし「超越的思惟」を哲学という営みの本質と規定している。非対象的思惟とは主観と客観を越えた非対象的なものを把握する思惟であり、主観に対向する対象的存在を把握する通常の思惟とは異なる働きである。ヤスパースは著作の随所で対象的思惟の限界を主張し、対象的思惟からの超越を説いている。対象的存在は、そのつどのパースペクティヴの制約の下にあり、一つの観点から固定化された存在であり、存在そのものではない。物事を明確化するには対象的思惟は欠かせず、非対象的思惟は対象的思惟を前提としつつ、それを乗り越えて行くことで遂行される。本論考では、まず哲学が非対象的思惟と規定される所以を明らかにし、その上でヤスパースの主要思想である「暗号論」が非対象的思惟として主張されていることを確認する。次にヤスパース以外に非対象的思惟を明確に主張している思想として、実存の信仰が論理的には逆説の性格を持つと主張したキェルケゴール、および西洋のロゴスとは異なる思惟である東洋思想におけるレンマを概観する。さらにこれらとヤスパースを比較して非対象的思惟の意義について考察する。
著者
大塚 茂
出版者
米子工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

携帯情報端末としてモバイル化への対応が望まれるHDD、DVD・BDドライブ用スピンドルモータの軸受に、多孔質焼結含油体を用い、その端面および内周面に気孔調整層と動圧形状を形成した「スラスト・ラジアル複合軸受」を製作した。本軸受試料を使用し、軸起動時といった非定常状態において、要望される高速化・高精度化に適した動圧形状仕様やその組合せの適正化検討を実験的に実施した。結果として、動圧形状はヘリングボーン形状が最も高速化・高精度化に適しており、耐振・耐衝撃性も高く、加振状態においても十分な軸振れ抑制効果を発揮できることが判明した。
著者
竹内 彰継
出版者
米子工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は市販の光学機器だけを用いて安価に太陽の彩層の速度場を観測する望遠鏡を製作し、それを太陽プロミネンスの振動・波動現象の研究などに利用することにある。本望遠鏡は口径8cmの屈折望遠鏡の後に半値幅0.3AのHαフィルタと冷却CCDカメラを取り付けたもの3本を同一架台に搭載したものから構成される。Hαフィルタは設定温度を変えると透過波長帯をずらすことができるので3本の望遠鏡でHα線の線中心、短波長側ウィング、長波長側ウイングの光の強度を観測し、Hα線のドップラーシフトの2次元情報を得て、彩層速度の2次元分布図を作ることができるというのが本望遠鏡の特長である。次に、望遠鏡の性能の検定を行うため国立天文台三鷹キャンパスの分光器を利用してHαフィルタの分光・温度特性の測定を行い、各フィルタの波長λ(A)-温度T(℃)関係を求めた。続いて、京都大学理学研究科附属花山天文台のシーロスタットと水平分光器を利用してHαフィルタの透過波長帯のムラの有無を調べ、ムラの影響はほとんど無く精度良く太陽彩層の速度場が測定できることを示した。最後に、太陽表面上のジェット現象「サージ」や太陽表面に新しい磁束演浮き上がってくる「浮上磁場領域」の観測を行い、速度分布の2次元分布図(ドップラーグラム)を製作した。また、2006年11月9日の水星の日面通過を観測し、そのとき太陽面上に存在した黒点の温度の精密測定を行った。太陽プロミネンスの振動の研究については、本研究期間では充分なデータが蓄積できなかったが、今後とも本望遠鏡で研究を継続しその物理の解明に寄与して行きたい。
著者
谷本 明逸 山内 義一 山口 顕司
出版者
米子工業高等専門学校
雑誌
米子工業高等専門学校研究報告 (ISSN:02877899)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.31-36, 2003-12

機械工学科3学年次の機械工作実習授業で行っているNC旋盤プログラミング実習について,平成15年度より新しい教授法を導入した.初めてNC旋盤に接する学生に対しては,早い段階で直観的イメージを形成することが重要である.そこで,NC旋盤の概要とプログラミングの基礎を説明するビデオを用いることにした.また,学生の作成したNC旋盤プログラムを検証するためにNC旋盤の動作状況を体感的に理解できるNC旋盤シミュレータを導入した.これらの手法によって学生にNC旋盤プログラミングを直観的かつ体感的に認識させることで,教育効果をあげることができた.