- 著者
-
竹内 恒博
- 出版者
- 名古屋大学
- 雑誌
- 若手研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 2005
エネルギー枯渇問題と,化石燃料消費による地球温暖化問題の観点から,廃熱や太陽熱を利用しエネルギー利用効率を高める技術の開発が急務である.熱を電気に変換できる熱電材料はこれらの諸問題を解決する機能性材料として注目を集めている.現在実用化されている熱電材料による熱電発電は変換効率が悪く,現状では大規模な熱電発電が行われる迄に至っていない.熱電材料の特性を向上により大規模熱電発電を実現することは,21世紀の材料研究者に課せられた最も重要な課題の一つである.申請者は,近年,様々な金属材料の異常な電子物性(電気伝導率,熱伝導率,熱電能,電子比熱係数,ホール係数)を電子構造と結晶構造を解析することにより解明する基礎研究を行ってきた.これらの基礎研究により得られた知見から,熱電材料に対して今までに提案されていない全く新しい材料設計指針を構築するに至った.本研究では,申請者が提案する熱電材料設計指針により高性能熱電材料を開発することを目的としている.平成19年度に行った研究では,電子構造に数k_BT程度のエネルギー幅の微細構造がある場合に,熱伝導度に異常が生じWiedemann-Franz則を適用することができなくなることを明らかにした.バンド計算と低温比熱の測定から求めた電子状態密度とBoltzmann輸送方程式を用いて電子熱伝導度を解析した結果,観測される異常な熱伝導度を完全に理解することに成功した.平成19年度に得た成果も含め,本課題研究により蓄積してきた研究成果により,全く新しく,かつ,極めて有効な熱電材料の設計指針を構築することができたと考えている.