著者
安達 茂実 古谷 徳夫 三沢 芳夫 石田 道雄 金沢 浩二 竹内 正七 田中 耕平
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.2031-2036, 1986-11-01

概要 近年、絨毛癌に対する化学療法において、etoposlde(VP-16)やclsplatm(CDDP)の投与が試みられ、その有効性が報告されている。今回、Nude Mouse (以下NM)移植絨毛癌細胞株GCH-1に対するVP-16、CDDPの抗腫瘍効果をMTXとの比較において検討するとともに、VP-16、CDDPの組織内移行濃度とその抗腫瘍効果およひ副作用との関連性についても検討し、以下の結果を得た。 1)腫瘍増殖抑制率Inhlbltlon Rate (IR)はVP-16 82 6%、CDDP 74 6%、MTX 36 2%てあり、VP-16およひCDDPのIRはMTXのIRに比較して有意であつた。 2)VP-16、CDDP、MTX投与群担癌NM、非担癌NMにおける薬剤投与前との比体重の推移をみると、CDDP投与群に有意の比体重減少が観察された。 3)担癌NMの血清β-HCGの推移は、腫瘍の増大と並行して上昇する傾向を示し、腫瘍増殖抑制効果のみられた薬剤投与群では明確な上昇は観察されなかつた。 4)VP-16 25mg/kg、 CDDP 5mg/kg を担癌NMにone shot にて腹腔内投与し、腫瘍、血液、各臓器におけるVP-16、CDDP濃度の経時的推移をみた。投与後05時間において、血中濃度に対する腫瘍、肝、腎濃度を比較すると、VP-16では各々0 10倍、0 59倍、0 32倍、CDDPでは2 68倍、2 85倍、5 42倍であつた。したがつて、VP-16はその血中濃度の割には各組織への移行率は低く、一方、CDDPはその血中濃度の割には各組織への移行率が高かつた。次に、投与後4時間までの推移をみると、VP-16の濃度は急速に減少し、投与後05時間における濃度に比較して、血液、肝、腎濃度はほぼ10%以下に減少した。これに対し、腫瘍濃度はなお37 1%の遣残を示した。CDDP濃度の減少はVP-16に比較して連延し、血液、肝、腎濃度はなお50〜60%の遺残を示し、腫瘍濃度はむしろ減少が早く、約20%の遺残に過ぎなかつた。
著者
小幡 憲郎 児玉 省二 半藤 保 竹内 正七
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.413-421, 1980-04-01

異なった免疫能を持つだウィスター系ラット(無処置群,胸腺摘除群,プレドニゾロン投与群)の腎被膜下に,妊娠5〜11週の正常遊離絨毛を移植し,移植絨毛の変化を形態学約に検討した.1)宿主(ラット)の移植絨毛に対する免疫学的応答としての小円形細胞浸潤は,無処麓群では移植後3日で認められ,以後増強し14日目には全例に認めた.胸腺摘除騨では18〜30%にしか小円形綱胸浸潤はみられず,免疫抑制が示唆された.2)絨毛細胞表面のアルシアンブルー染色陽性物質の有無と小円形細胞浸潤の関係を無処置群について検討した.本染色陽性物質陰性例の66%,陽性例の36%に小円形細胞浸潤がみられ,本染色陽性物質の免疫保護作用が強く示唆された.3)移植絨毛生着率は移植後5目,7日目で胸腺摘除群では他群に比べて有意に高率であった.しかし生着期間の延長は胸腺摘除群,ブレドニゾロン投与群に認められなかった.4)移植絨毛細胞の増確は,胸腺摘除群が他の2群に比べ,移植後5日,7日目で有意に大であった.5)増殖絨毛細胞のpopultionはラングハンス細胞が主体であり,核の大小不同,核分割像,核小体がみられた.またblood space,syncytal lacunae 島=状構造および浸潤部位ではProteolysis 作用がみられた.絨毛構造の新生はなかった.今回の実験は人絨毛組織の異種移植という非生理的なシステムを用いているものであるが,人絨毛細胞の旺盛た増殖力とそれに及ぼす宿主の移植免疫のかかわりを強く示唆するものと解された.さらに絨毛細胞の増殖,分化におよぼす胎児の存在の影響を示唆する成績であり,これは胞状奇胎発生における絨毛細胞の増殖と関連して,極めて示唆に富む成績であった.