- 著者
-
竹原 浩介
酒井 英樹
- 出版者
- 日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
- 雑誌
- 日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, no.1, pp.32-35, 2016 (Released:2016-04-20)
- 参考文献数
- 20
- 被引用文献数
-
2
褐色細胞腫はカテコールアミンを産生する腫瘍で,約90%は良性の疾患であり,適切に診断・治療することで治癒が期待できる。高血圧を中心に多彩な症状を呈し,心筋梗塞,不整脈,大動脈解離,心筋症,脳血管障害など重篤な合併症を併発することもある。根治治療は手術であり,術式に関しては腹腔鏡手術の適応が拡大しつつある。手術を安全に遂行するためには,術前の管理が重要であり,血圧のコントロールと循環血液量の回復を目的に,速やかにα1遮断薬の投与を開始して漸増する。また心血管障害や糖代謝異常の精査も必要である。術中は腫瘍からのカテコールアミンの放出を防ぐために,腫瘍を圧迫しないように心掛け,腫瘍摘出後は低血圧の危険性があり,必要に応じて昇圧剤を使用する。術後は低血糖にも注意する必要がある。退院後は悪性の可能性を考慮して,長期的な経過観察が必要である。