著者
一宮 朋来 竹岡 香織 山崎 透 那須 勝
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
日本化学療法学会雑誌 (ISSN:13407007)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.640-646, 1995-06-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
35

緑膿菌性慢性気道感染症の難治化の要因とされるbiomm形成に朗するclindamycin (CLDM) およびerythromycin (EM), tobramycin (TOB), piperacillin, ceftazidime, ofloxacinの影響をin vitroにて検討した。Biomm形成の指標として, 緑膿菌産生のアルギン酸と菌体外多糖類を定量的に測定した。緑膿菌ムコイド株のアルギン酸産生量は, 普通寒天培地上で産生されたアルギン酸を高速液体クロマトグラフィーにて定量し, 非ムコイド株の菌体外多糖類 (91ycocalyx) は, シリコン片上に形成させたbiofilm中の多糖類をトリプトファン法により定量化した。それぞれにつき最小発育阻止渡度以下の濃度 (sub-MIC) 作用下での影響を検討した。アルギン酸産生はCLDM≧1/64MIC, EM≧1/256MIC, TOB1/4MICにおいて (P<0.02), glycocalyx産生はCLDM≧1/16MIC, EM≧1/16MICにて有意に産生抑制が認められた (P<0.05)。他の抗菌薬のsub-MICはまったく影響を与えなかった。走査型電子顕微鏡による観察においてもCLDMのsub-MIC作用下にてbiofi1mの産生が抑制される像が得られた。以上より, CLDMは, EMと同様にsub-MICにおいて緑膿菌biomm形成を抑制することが示唆された。