著者
中洲 庸子 竹市 康裕 五十棲 孝裕 半田 譲二
出版者
The Japan Stroke Society
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.315-320, 1991

症例は64歳女性.右動眼神経麻痺の精査のため入院後, 意識を消失し倒れているところを発見された.意識障害と右上肢の不全麻痺は数時間以内に消失した.CTでは後頭蓋窩と左側頭頭頂部に硬膜下血腫を認めたが, くも膜下出血はなかった.脳血管撮影で, 両側の内頚動脈一後交通動脈分岐部 (IG-PC) に嚢状動脈瘤を, 左側頭葉に脳動静脈異常 (AVM) を認めた.出血源の同定が困難であったため, 最も出血の危険性が高いと考えられた右IC-PC動脈瘤から根治術を行い, 二期的に左IG-PC動脈瘤, 左AVMの順に手術を行ったところ, 何れも明らかな出血の痕跡を証明できなかった.<BR>破裂脳動脈瘤は, 時に急性硬膜下血腫を形成することが知られている.実際には, 本症例のように脳動脈瘤が直接硬膜下腔に出血したものか, 外傷が原因の硬膜下血腫であったのかを診断することは, 必ずしも容易でないことがある.出血源となりうる病変を複数かかえた症例では, 出血源の同定が困難であれば血管撮影の詳細な検討を行い, 再出血の起こる可能性の最も高いものから順に根治術を施行するべきであろう.