著者
竹田 稔真 朝岡 良浩 林 誠二
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.351-366, 2021-11-05 (Released:2021-11-20)
参考文献数
31
被引用文献数
2

将来の気候変動の影響も考慮した大規模豪雨時に,下流側市街地の洪水緩和に寄与する田んぼダムの雨水流出抑制効果を検討した.まず,田んぼダムの流出抑制機能と畦畔越流を組み込んだ雨水流出モデルの妥当性を検証した上で,田んぼダムの効果を2019年台風19号の降雨を適用した数値計算により確認した.次いで,気候モデルにより推定された阿武隈川流域内4地点の現在並びに将来降雨を適用した計算を行い,水田水深や排水路水深の変動状況の比較から,気候変動に対する田んぼダムの有用性を定量評価した.結果として台風19号に対しては,田んぼダムにより排水路水深を0.10 m~0.16 m低下させ,流出ピークを60分遅延できることが示された.次いで,現在並びに将来降雨を適用した場合,現況の畦畔高では畦畔越流が生じ,田んぼダムの効果は必ずしも機能しなかった.これに対し,越流が生じないよう畦畔高を最大0.42 mまで嵩上げした場合,将来降雨適用時にも田んぼダムにより排水路水深の上昇が抑えられ,水害リスク軽減に繋がる可能性が示された.以上より,田んぼダムは畦畔高の嵩上げと併せて行うことが適応策として効果的と考えられる.