著者
ザヴアリツスキー A. N. 竹田 英夫
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
no.39, pp.30-37, 1958-08-28

他の地域と同様に,ウラル地方の黄鉄鉱鉱床は結晶片岩中に胚胎し,最も典型的な交代作用により生成された鉱床と考えられる.ウラルにおける調査研究の結果,母岩が変成し,一部結晶片岩化した一連の動力変成作用の時期よりも以前に,これらの鉱体は交代作用によって生成されたことが判明した.鉱体の構造および鉱物組成の点からみて,鉱体自身が相当の変成作用を受けている.構成鉱物の再配列およびある鉱物が他の鉱物によって交代されるという現象は変成条件の下においても生じている.故に,交代作用の面から,鉱石鉱物の交代作用が初生的(primary)であるとか,または変成作用によるものであるとかは,必ずしも結論出来ない.微弱な変成作用を受けた鉱床では,しばしばコロフォーム組織(colloform texture)が残っている.またごくわずかに変成された鉱体中には,初生の白鉄鉱と繊維亜鉛鉱が見出される.これらの特徴的な組織や鉱物はより高度に変成された鉱床中にはみられない.鉱体は結晶片岩の構造に調和した特徴的なレンズ状を呈しているが,この形態は変成作用の構造運動によって生じたものである.種々のウラルの黄鉄鉱鉱床にみられる差異は,そのほとんどが変成条件の差を反映したものであって,鉱床が最初沈積したときの差によるものではない.