著者
竹谷 裕之
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

1.自動車関連企業の海外進出や部品の海外調達の進展に伴う、雇用・労働市場への影響について、各種統計調査結果の解析を進めた結果、1991年以降は年を経るに従い、雇用指標は悪化し、特に95年から96年にかけ、東海などが有効求人倍率の落ち込み、製造業の労働時間の非自発的圧縮、パート労働者比率の増大、倒産の増大など、深刻であった。2.愛知県の県内2000の事業所アンケート結果等によれば、最近3年間で、非海外シフト企業の余剰人員発生状況は、海外シフト企業より遙かに深刻な事態にあることが判明。農村部に多い非海外シフト企業における雇用環境の悪化は顕著である。3.3次以下の下請を対象にヒヤリングを進めた結果、受注量の減退や単価の押し下げが顕著であり、今後5年間では事業規模の拡大や高付付加値生産への転換を進める下請もあるが、規模を縮小し、或いは転・廃業する企業が1/3を越えそうなことが判明した。4.農村部の下請雇用の再編に伴い、農村労働力の農業回帰という形での就業再編が、新規参入にも刺激され起こっているが、量的には多くない。高齢者の農業就業の増加が目に付く。定年退職者が従来であれば再雇用されるケースが多かったのと対照的である。5.雇用条件悪化の中、終了機会を自ら創出する起業活動の展開は多様である。村興しと結合させ、定年、間近な壮年層、女性を中心に「百年草」、「山紫庵」などの保護・加工販売・文化を結びつけた交流型 施設経営、「荷互奈」などの生産・加工産直施設経営、名古屋市農業文化圏と提携した食材提供の「つくばね」「ひこばえ」グループなど、都市農村交流型のものが多い。経営管理面は概して脆弱であり、地域差も大きく、農村就業の新機軸を担う点からみればまだ補完的である。