著者
笠行 健介 兼清 泰明 石川 敏之 檀 寛成
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_23-I_31, 2018 (Released:2019-01-31)
参考文献数
10
被引用文献数
1

CFRP接着鋼部材を対象とした数値解析において発生する恐れのあるスキームの数値不安定化を,多倍長精度計算方式を適用することにより安定化させて高精度の解を得る手法を構築する.まずCFRP板が接着された鋼板に引張荷重が負荷されるという想定の下で,CFRP板に生ずる軸力とせん断力に対する静力学的基本微分方程式を導き,境界条件を伴う解を伝達マトリクス法により初期値問題の解から構成する枠組みを与える.次に,IEEE 754に基づく固定精度浮動小数点方式による数値解法ではスキームを高精度化しても数値不安定現象が発生し,定性的に異なる挙動の解しか得られないことを示す.最後に多倍長精度計算ライブラリGMPを用いた任意精度方式による数値解法を適用することにより,スキームが安定化して定性的に正しい解が得られることを明らかとした.さらに,(i) 同様のアプローチがCFRP板端部にテーパを設けた場合にも有効であること,(ii) 得られた解は有限要素解析の結果とよく一致すること,(iii) 有限要素解析では数値評価が困難なCFRP板端部付近の応力の挙動も算出し得ること,を明らかとした.