著者
笹井 香
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.18-34, 2017-10-01 (Released:2018-04-01)
参考文献数
13

「ばか者!」「恥知らず!」「嘘つき!」などの文は、先行研究において文として適切に位置づけられてきたとは言いがたい。本稿では、これらの文が、同じく体言を骨子とする文である感動文や呼び掛け文などとは異なる形式や機能をもつことを明らかにし、これらを新たに「レッテル貼り文」と位置づけることを試みた。レッテル貼り文は「性質、特徴、属性などを示す要素+人や物を示す要素」という構造をもつ名詞(=レッテル)から成り立つ体言骨子の文で、対象への価値評価にともなう怒りや呆れ、嘲り、蔑み、嫌悪、侮蔑などの情意を表出することを専らとする文、即ち悪態をつく文である。このような文は、その言語場において話し手が対象に下した価値評価が名詞の形式(=レッテル)で表され、文が構成されていると考えられる。このような文を発話することによって、対象に下した価値評価、即ちレッテルを貼り付けているのである。
著者
笹井 香
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.16-31, 2006-01-01

現代語の感動文の研究において感動文とされるのは,感動喚体句の形式をもっと考えられている文(本稿ではA型と呼ぶ)であり,「なんと〜だろう!」の形式による文は,多くの先行研究で疑問文の周辺にあるものと扱われてきた。しかし,本稿では「なんと〜だろう!」の形式による文の特徴として,(1)「なんと」は不定語としては機能していない,(2)「なんと」は属性概念を持つ語と体言の両方を要求するため,「なんと〜だろう!」の形式による文は必ず文中にコトを構成する, (3)「なんと」と共起する「だろう」等の判断辞は,判断辞としての意味の対立をもたず,その意味の変質に伴い接続形態も変化している,以上のことを明らかにした。さらに,「なんと」形式による文は,形式,表現ともにA型と対応していることを指摘し,感動文であることを述べた。
著者
笹井 香
出版者
関西学院大学
雑誌
日本文藝研究 (ISSN:02869136)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.A1-A21, 2005-09-10
著者
笹井 香
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.18-34, 2017

<p>「ばか者!」「恥知らず!」「嘘つき!」などの文は、先行研究において文として適切に位置づけられてきたとは言いがたい。本稿では、これらの文が、同じく体言を骨子とする文である感動文や呼び掛け文などとは異なる形式や機能をもつことを明らかにし、これらを新たに「レッテル貼り文」と位置づけることを試みた。レッテル貼り文は「性質、特徴、属性などを示す要素+人や物を示す要素」という構造をもつ名詞(=レッテル)から成り立つ体言骨子の文で、対象への価値評価にともなう怒りや呆れ、嘲り、蔑み、嫌悪、侮蔑などの情意を表出することを専らとする文、即ち悪態をつく文である。このような文は、その言語場において話し手が対象に下した価値評価が名詞の形式(=レッテル)で表され、文が構成されていると考えられる。このような文を発話することによって、対象に下した価値評価、即ちレッテルを貼り付けているのである。</p>
著者
笹井 香 Kaori Sasai
雑誌
日本文藝研究 (ISSN:02869136)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-23, 2018-10-30