著者
箕田 雅彦
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

平成17年度は、高分子材料を常圧常温下で擬似体液(SBF)中へ浸漬するというバイオミネラリゼーションに倣った手法により、キチン/アパタイト粒状ハイブリッドを創製した。市販の多孔性キチン粒状ゲルをSi(OEt)_4を用いるゾル-ゲル反応によりカルシウムシリケート化してSBFへ浸漬することでハイブリッドを得た。さらに、CH_3Si(OEt)_3含有ゾルを用いて同様に処理することで、ハイブリッド表面無機層を改質した。また、バイオミネラリゼーションに倣ったPP、PET材料とアパタイトとのハイブリッド化についても検討した。高分子基板をTi(OiPr)_4を用いるゾル-ゲル法でチタニアコートし、沸騰水中で3時間保持してチタニア層の結晶構造変換を行ったのちSBFへ浸漬することで、アパタイトとのハイブリッドを得た。既報の希塩酸加熱処理法に比してより穏和な熱水処理法が、チタニア層の結晶構造変換に有効であることを明らかにした。平成18年度は、有機/無機界面強度の増大によるハイブリッドの力学的特性の向上をねらいとして、高分子の表面修飾反応を検討した。PET基板をアルカリ前処理して3-イソシアナートプロピルトリエトシキシラン(IPTS)と反応させることで表面にIPTS残基を導入した。続いて、Ti(OiPr)_4を用いるゾル-ゲル法によるチタニアコーティングと熱水処理を行った後SBFに浸漬することで、試料表面にアパタイトを形成させることができた。さらに、粘着テープによる剥離面をXPS解析した結果、IPTS処理無しの試料に比して、基板表面をIPTS処理したハイブリッド試料では剥離強度の増大が認められた。また、ハイブリッド形成時のチタニア層とのネットワーク形成ならびに投錨効果による有機/無機界面強度の増大をねらいとして、PET基板表面へ-si(OMe)_3側鎖を有するグラフトポリマー鎖を導入する手法を開発した。