著者
箱崎 友美 鳥越 郁代 佐藤 香代
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.140-152, 2017 (Released:2017-12-22)
参考文献数
49
被引用文献数
1 1

目 的帝王切開(帝切)で出産した女性の出産満足度と産後早期のうつ傾向との関連を明らかすること,ならびにその出産満足度に影響を及ぼす要因について検討する。対象と方法A・B県の22の産科施設にて帝切で出産した褥婦362名を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施し,回収は留め置き法と郵送法を用いた。質問紙は,母親の基本属性・帝切で出産した母親の出産満足度(日本語版SMMS)・産後のうつ傾向(EPDS)・自尊感情(自尊感情尺度日本語版)・母親の愛着(MAQ)より構成された。SMMS得点とEPDS得点ならびに属性との関連は,t検定・一元配置分散分析を用い,出産満足度に影響を及ぼす要因の検討は,重回帰分析を用い分析した。結 果回収率は83.1%(301名)で,そのうち294名(97.7%)を分析対象とした。帝切の分類は,予定帝切が207名(70.4%),緊急帝切87名(29.6%)で,出産満足群(SMMS得点≥147点)が247名(84.0%)を占めた。また出産満足群は,出産不満足群に比して有意にEPDS得点が低かった(p=0.003)。さらにSMMS得点に対する影響要因として,母親の愛着得点が選択された(p=0.001)。結 論出産満足群・不満足群の2群間において,EPDS得点に有意差が認められたことから,帝切での出産満足度と産後早期のうつ傾向には関連があることが示唆された。また,出産満足度に影響を及ぼす要因として母親の愛着が確認された。以上のことから,助産師は,出産の振り返りを通して,帝切による出産に対する女性の認識を確認し,退院後も継続した支援を提供していくことが重要である。また帝切による出産の場合,遅れがちになる産後の早期母子接触・早期授乳を積極的に実施することが,出産満足度の向上につながると考えられる。