著者
築地 茉莉子
出版者
千葉大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究目的 : 治療抵抗性統合失調症の治療薬であるクロザリル(以下CLZ)は重篤な副作用の無顆粒球症を引き起こすことが知られ、アジア人では白人と比較して無顆粒球症の発現リスクが2.4倍であるという報告もある。血液毒性が発現する要因についてはいまだ解明されていないため、CLZの使用にあたっては白血球数のモニタリングが必須となっている。躁うつ病の躁状態改善薬である炭酸リチウム(以下Li)は、その副作用に白血球上昇作用を有する。千葉大学医学部附属病院(以下当院)ではCLZ投与患者においても、白血球減少を予防する目的で低用量のLiを使用しているケースが認められている。そこで本研究ではCLZ使用患者において、白血球減少をきたす要因ならびにLi投与による白血球増加の患者側の要因と白血球増多を目的としたLiの至適投与量を解明することを目的とした。研究方法 : 当院精神神経科においてCLZが投与開始となった症例について、患者背景、CLZ投与前後の白血球数〓iの使用の有無などを電子カルテより遡及的に抽出し、本年度は白血球減少をきたす患者の要因ならびにLi投与による白血球数の変動への影響の検証とその要因の検討を行った。研究成果 : 検討の対象となった症例は、2010年以降当院にてCLZが投与開始となった16例であった。このうちLiが投与された症例は10例であった。今回の検討により、CLZを投与された患者の白血球数は、長期的には減少傾向であったが、投与開始初期はCLZ投与前よりも白血球数が上昇する傾向が認められた。また、Liを併用した患者群のCLZ投与前の白血球数は、Liを使用しなかった患者群よりも低値であったことが明らかとなった。Liを併用した群では白血球減少の割合は軽度であったが、LiはCLZによる白血球減少を根治するものではなく、長期使用による副作用発現も懸念されることから、有効性と安全性の検証が必要であることが示唆された。