著者
本間 憲治 八反田 葉月 篠原 悠人 鈴木 康太 杉原 俊一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>近年,脳血管疾患(以下,CVA)死亡数は減少傾向にあるが,要介護状態となる主原因疾患とされている。一方,心不全(以下,HF)は高齢化に伴い患者数は増加傾向にあり,今後はCVAとHFなど重複障害例の増加が予想される。</p><p></p><p>当院は脳神経外科に加えて循環器科,心臓血管外科を併設した141床の一般病院で,回復期病棟も併設しており,急性期から在宅まで一貫したリハビリテーションを提供している。当院の地域は脳卒中地域連携パスによる医療連携が積極的に行われており,生活期との連携については,退院時の申し送りを中心に行っている。</p><p></p><p>そこで今回,CVAとHFの重複障害例の申し送り内容に特徴がないか後方視的に検討する事を目的とした。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象はH26年9月からH28年9月に当院回復期病棟から自宅退院したCVA症例中,退院前に申し送りを行った者110例とし,既往にHF及び入院中にHFを併発したHFあり群29例とHFなし群81例の2群に分類し,申し送り書の内容について比較検討した。</p><p></p><p>分析方法は退院時申し送り書より抽出した年齢,退院時の合計FIM,運動FIM,認知FIMの2群間比較には対応のないt検定,性別,高次脳機能障害,及び認知機能の低下の有無の2群間比較にはχ二乗検定を用い有意水準を5%未満とした。また,退院時申し送り書の項目より,「予想される問題点」と「依頼事項」の記述内容を,計量テキスト分析ソフト「KH-Coder」を使用し,2群の上記各項目に対し共起ネットワーク分析(サブグラフ検出・媒介)を用いjaccard係数を0.2以上とした。共起ネットワーク抽出語数,線の数,グループ数を抽出した。なお,共起ネットワークとは,テキスト中の単語間の出現パターンが類似したものを線で結んだ図で,結びつきの強さをjaccard係数で表している。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>年齢,性別,退院時の合計FIM,運動FIM,認知FIM,高次脳機能障害の有無,認知面低下の有無の全てにおいて,両群で有意差を認めなかった。「予想される問題点」について,共起ネットワーク抽出語数はHFあり32,HFなし98,線の数はHFあり46,HFなし77,グループ数はHFあり8,HFなし11で,HFありで全てにおいて少なかった。「依頼事項」について,共起ネットワーク抽出語数はHFあり41,HFなし126,線の数はHFあり73,HFなし117,グループ数はHFあり12,HFなし11で,HFありでグループ数を除き少なかった。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>「予想される問題点」「依頼事項」について,共起ネットワーク抽出語数,線の数はそれぞれHFありで少なく,障害が重複し,問題点の細分化が難しく,抽象的で個別性の低い内容となる傾向が示唆された。</p><p></p><p>HFありでは「予想される問題点」に比べ「依頼事項」のグループ数は増加しており,HFありの抽象的で個別性の低い内容から具体的な依頼事項を絞り込むことが困難なため,依頼事項が散在化した可能性が示唆された。</p><p></p><p>今後の展望として,重複障害例の申し送り時には身体活動の増加や予防を目的とした個別性の高い内容を伝え,生活期との連携を行いたいと考える。</p>
著者
今泉 有美子 杉原 俊一 鈴木 康太 市場 友梨 八反田 葉月 本間 憲治 篠原 悠人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】脳卒中片麻痺者において,一時的な移動手段として車いすを利用することは多い。その際,非麻痺側上肢ではハンドリムを回し,下肢では床面を蹴り駆動するため,非対称な動作を助長している場面を多く経験する。片麻痺者の車いす座位について,先行研究では殿部荷重パターンの報告は散見されるが,車いす駆動中の座圧の変化について言及している報告は少ない。本研究の目的は,健常成人にて片麻痺患者を模した環境を設定して片手片脚駆動を実施し,前額面上で座位姿勢の影響を明らかにすることである。【方法】対象は健常成人6名(性別:男性3名・女性3名,年齢:25.7±0.8歳)とした。計測にはモジュラー車いす(松下電工株式会社製)を使用し,前座高は下腿長+2cm,後座高・フットサポートの長さは下腿長,アームサポートの高さは肘頭高+2cmに調整した。課題は右上下肢での片手片脚駆動による直進走行とし,座クッションを外したシートの上にベニヤ板を水平に設置(以下,水平条件),ベニヤ板を右側が高くなるよう5°傾斜させて設置(以下,傾斜条件),座面の中心がたわむように調整した張り調整シートのみ(以下,たわみ条件)の3条件で,10秒間の安静座位を保持した後,任意のスピードで5メートル駆動するよう指示した。計測項目は,静止状態からの座圧中心の変化と,体幹の前額面上での傾斜角度とした。座圧中心には,3条件の座面にSRソフトビジョン数値版(東海ゴム工業製)を設置して測定した。体幹の傾斜角度は,胸骨部の高さで巻きつけた加速度センサーと,デジタルビデオカメラで撮影した正面画像から,両肩峰を結んだ線と水平面のなす角をImage Jを使用して測定した値を使用した。分析方法としては,右手でハンドリムを掴んだ瞬間からハンドリムから手を放した瞬間までを1駆動周期とし,1駆動周期中と安静状態の座圧中心の差の平均値と,1駆動周期の駆動開始時と駆動終了時の体幹傾斜角度の差(以下,体幹傾斜角度の変化)の平均値を各条件で比較した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究の実施にあたり,被験者に研究の趣旨と測定の方法について説明を行い,協力の同意を得た後に測定を行った。【結果】座圧中心の安静状態と1駆動周期中の差の平均は,水平条件で右方向へ6.9±2.2mm,傾斜条件で右方向へ9.6±2.2mm,たわみ条件で右方向へ3.5±1.0mmであり,傾斜条件で駆動側への偏倚が大きく,たわみ条件では小さかった。加速度センサーで測定した体幹傾斜角度の変化の平均は,水平条件で右方向へ0.5±2.8°,傾斜条件で右方向へ1.1±1.0°,たわみ条件で左方向へ1.1±1.2°であり,傾斜条件で駆動側への傾斜が大きく,たわみ条件では駆動側と反対側への傾斜がみられた。画像から計測した体幹傾斜角度の変化の平均は,水平条件で右へ10.1±0.7°,傾斜条件で右へ11.7±1.0°,たわみ条件で右へ8.0±1.5°であり,傾斜条件で駆動側への傾斜が大きく,たわみ条件では小さかった。【考察】水平条件と傾斜条件では,駆動中の座圧中心の駆動側への偏倚,体幹の駆動側への傾斜を認め,いずれも傾斜条件で大きかった。健常者であっても,片手片脚駆動では体幹の前額面上での非対称性が生じると考えられた。また,傾斜条件は片麻痺者に見られる麻痺側股関節周囲筋の筋緊張低下や股関節外旋などによる骨盤の麻痺側への傾斜を模擬的に設定していることから,片麻痺者の片手片脚駆動では,骨盤の傾斜角度により体幹の非対称性が増強することが示唆された。今回たわみ条件では,座圧中心の偏倚と体幹傾斜角度ともに他の2条件に比べ小さかった。座面がたわんでいる環境では,駆動方向の重心移動が困難であることが考えられた。【理学療法学研究としての意義】脳卒中片麻痺者では,将来的に歩行を獲得する場合においても一時的に車いすを移動手段として利用する症例は多い。歩行獲得に向けて理学療法を進めていく上でも,車いす駆動中の身体の非対称性を軽減していくことは重要であると考えられる。車いすの片手片脚駆動での体幹の非対称性を明らかにすることで,車いす駆動の指導方法を検討する一助となると考えられる。
著者
本間 憲治 八反田 葉月 篠原 悠人 鈴木 康太 杉原 俊一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1580, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】近年,脳血管疾患(以下,CVA)死亡数は減少傾向にあるが,要介護状態となる主原因疾患とされている。一方,心不全(以下,HF)は高齢化に伴い患者数は増加傾向にあり,今後はCVAとHFなど重複障害例の増加が予想される。当院は脳神経外科に加えて循環器科,心臓血管外科を併設した141床の一般病院で,回復期病棟も併設しており,急性期から在宅まで一貫したリハビリテーションを提供している。当院の地域は脳卒中地域連携パスによる医療連携が積極的に行われており,生活期との連携については,退院時の申し送りを中心に行っている。そこで今回,CVAとHFの重複障害例の申し送り内容に特徴がないか後方視的に検討する事を目的とした。【方法】対象はH26年9月からH28年9月に当院回復期病棟から自宅退院したCVA症例中,退院前に申し送りを行った者110例とし,既往にHF及び入院中にHFを併発したHFあり群29例とHFなし群81例の2群に分類し,申し送り書の内容について比較検討した。分析方法は退院時申し送り書より抽出した年齢,退院時の合計FIM,運動FIM,認知FIMの2群間比較には対応のないt検定,性別,高次脳機能障害,及び認知機能の低下の有無の2群間比較にはχ二乗検定を用い有意水準を5%未満とした。また,退院時申し送り書の項目より,「予想される問題点」と「依頼事項」の記述内容を,計量テキスト分析ソフト「KH-Coder」を使用し,2群の上記各項目に対し共起ネットワーク分析(サブグラフ検出・媒介)を用いjaccard係数を0.2以上とした。共起ネットワーク抽出語数,線の数,グループ数を抽出した。なお,共起ネットワークとは,テキスト中の単語間の出現パターンが類似したものを線で結んだ図で,結びつきの強さをjaccard係数で表している。【結果】年齢,性別,退院時の合計FIM,運動FIM,認知FIM,高次脳機能障害の有無,認知面低下の有無の全てにおいて,両群で有意差を認めなかった。「予想される問題点」について,共起ネットワーク抽出語数はHFあり32,HFなし98,線の数はHFあり46,HFなし77,グループ数はHFあり8,HFなし11で,HFありで全てにおいて少なかった。「依頼事項」について,共起ネットワーク抽出語数はHFあり41,HFなし126,線の数はHFあり73,HFなし117,グループ数はHFあり12,HFなし11で,HFありでグループ数を除き少なかった。【結論】「予想される問題点」「依頼事項」について,共起ネットワーク抽出語数,線の数はそれぞれHFありで少なく,障害が重複し,問題点の細分化が難しく,抽象的で個別性の低い内容となる傾向が示唆された。HFありでは「予想される問題点」に比べ「依頼事項」のグループ数は増加しており,HFありの抽象的で個別性の低い内容から具体的な依頼事項を絞り込むことが困難なため,依頼事項が散在化した可能性が示唆された。今後の展望として,重複障害例の申し送り時には身体活動の増加や予防を目的とした個別性の高い内容を伝え,生活期との連携を行いたいと考える。