著者
小玉 美津子 篠宮 光子 島田 蕗 鶴見 隆正
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101205-48101205, 2013

【はじめに、目的】神奈川県立麻生養護学校では、自立活動教諭として2008年6月より、理学療法士(以下PT) 、作業療法士が配属となった。業務内容は主に校内、校外における児童・生徒の実態把握や、教科・領域(自立活動)に関するアドバイス、ケース会の開催や教員、保護者からの相談対応、研修会講師などである。PTへの相談内容としては、呼吸介助、排痰介助方法、体の動かし方、姿勢、ポジショニング、歩行・階段の援助方法、運動量の調整に関する相談が多い。学校生活では車椅子で過ごす時間が多い中、目的に応じて、色々な姿勢を取り入れている。本発表では、本校2012年に在籍している肢体不自由教育部門の児童生徒の各ポジショニングの実態を紹介するとともに、PTが介入後の変化について考察を加え報告する。【方法】肢体不自由教育部門全生徒のうち大島の分類区分1,2の生徒30名のうち、日中活動のそれぞれの姿勢をポジション別に、1.医療ケアの有無、2.変形の有無、3.異常呼吸の有無との関連性で、PTが介入することで実施可能になったポジションをまとめた。今までとれなかった姿勢をとる事で、生活上何が変わったか、担任がどのように実感できたか振り返りを行った。【倫理的配慮、説明と同意】本発表にあたり、学校長ならびに神奈川県教育委員会で発表主旨、内容について承諾を得た。【結果】小学部11名のうち胃ろうを含む児童6名中3名、中学部12名のうち胃ろうを含む生徒5名中3名PTが介入することで腹臥位が可能になった。高等部は7名のうち胃ろう、気管切開を含む生徒がいなく、バルーンなどの訓練具を使用すれば、全員腹臥位が可能だった。又担任の聞き取りからは、腹臥位をとることにより、排痰姿勢がとれ呼吸が楽そうだった。背中側への心地よい刺激を受けいれる機会を得た。担任だけでなくPTが介入することによって、安心して腹臥位をとることが出来たなどの意見を聞くことが出来た。【考察】学校生活で色々な姿勢がとれるように指導することも多いが、気管切開や胃ろうなどの医療ケアの関係、成長期における変形・拘縮の進行等の影響で困難なことも多い。学校に配置されたPTとして、校内で教員が安心して実施できる方法を提示することは、児童・生徒の主体的な学習を考えた場合、その意義は大きいと考える。国際生活機能分類(ICF)では、「できる活動=能力」と「している活動=実行状況」に分けて考えることが重要であると明記されている。特別支援学校においても、PTがハンドリングや補助具を工夫することで「できる」ことを教員の誰でもが日常的に「できる」ようにすることが大切になる。「できる活動は」すぐには「している活動」となりにくいが、特別支援学校内にPTが配置されたことにより、日常的に教員と協働し、学校生活の中で関わることで、「している活動」に展開していくことが出来る。対象児童・生徒30名中19名が呼吸状態に何らかの課題がある中で、家庭では困難な姿勢であっても、学校生活上、日常的にとれることは、特別支援教育のチーム力として評価したい。【理学療法学研究としての意義】2007年特別支援教育のための教育法の改正や2009年特別支援学校の学習指導要領の改訂により、教育現場においても専門家としてPTが関与することが多くなっている。障害の重度・重複傾向の中、医療、福祉側でのPTが関わる限界もあり、一人ひとりの子どもに理学療法を長期展開することは難しい。むしろ生活支援という視点で子ども達を取り巻く支援者に適切な関わりを理解してもらうことも重要であり、その意味からも、特別支援学校内でPTが配置された意義は大きい。