著者
篠崎 克子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.39-50, 2014

<b>目 的</b><br> 助産師を対象に多様な分娩体位の実践の促進或いは阻害影響要因を探索し分析する。<br><b>対象と方法</b><br> 研究デザインは,横断的記述デザインである。過去1年間分娩直接介助を行った助産師を対象に質問紙調査を行った。多様な分娩体位の実践助産師の定義は,3種類以上の体位での分娩介助の実践,妊産婦への多様な分娩体位の情報提供,バースプランの活用,という条件全てを満たす者とした。測定用具は,Alternative Labor Position(ALP)尺度と職務満足感を測定するHuman Resource Management チェックリスト(日本労働研究機構,2003)を用いた。分析は共分散構造分析を用いた。<br> 倫理的配慮は,大学及び該当施設の倫理審査委員会の承認を得た。<br><b>結 果</b><br> 回答が得られた387名を分析対象とした。多様な分娩体位の実践助産師は,124名(32.0%),未実践助産師は263名(68.0%)であった。81.1%の助産師が多様な分娩体位の利点と興味深さに肯定的であったが,60.4%が慣例的に砕石位で分娩を行っていた。ここに助産師の意識と実践に乖離があった。普及理論に基づく「革新性」では,イノベーターとアーリー・アダプターを革新派,アーリー・マジョリティ,レイト・マジョリティ,ラガードを保守派に分け,其々の特徴を分析した。その結果,革新派は,産科単科病棟に所属し,ほぼ正常の妊産婦をケアしている者,分娩体位の種類の数及び妊産婦への多様な体位の情報提供が有意に多かった。<br> 共分散構造分析の結果「多様な分娩体位の実践」の阻害要因は,パス係数が高い順に「変革を好まない考え方」「多様な分娩体位の技術に対する戸惑い」であった。促進要因は,「革新性」「専門性が発揮できる産科単科病棟」であった。<br><b>結 論</b><br> 「多様な分娩体位の実践」の促進要因は「革新性」「専門性が発揮できる産科単科病棟」であった。阻害要因は「変革を好まない考え方」「多様な分娩体位の技術に対する戸惑い」であった。