著者
篠澤 圭子 野上 恵嗣
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.482-493, 2014 (Released:2014-09-03)
参考文献数
45
被引用文献数
1

要約:APC レジスタンス(APCR)の原因として発見されたFactor V R506Q(FV Leiden)変異は,欧米白人における主要な静脈血栓症のリスクファクターであるが,これまでアジア人からは検出されていない.今回私達は,血漿FV 活性が低下しているにもかかわらず,重篤な深部静脈血栓症をおこした日本人少年のFV 遺伝子からW1920R(FV Nara)変異を同定し,日本人において初めてAPCR に関連する血栓性素因を報告した.FV-W1920R は,APC から受ける不活性化と,APC によるFVIIIa の不活性化におけるコファクターとしての機能の,両者の機能障害によってAPCR を示すことを解明した.とくに,APC によるFVIIIa の不活性化に対するFV-W1920R のコファクター機能は,FVIII のR336 の開裂を完全に阻止することにより,FV-R506Qよりも強い機能不全であることを明らかにした.