著者
重島 晃史 篠田 かおり 稲田 勤
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.53-57, 2007-03-31

ボツリヌス毒素A型を用いた治療(以下,ボツリヌス治療)を施行したアテトーゼ型脳性麻痺一症例について,その経時的効果を評価した.症例の粗大運動能力分類システムは5レベルで,日常生活は全介助であった.評価項目は下肢の他動的関節可動域および筋緊張,家族の介護負担度であり,評価時期はボツリヌス毒素の注射前,1ヵ月後,4ヵ月後であった.統計学的解析は,他動的関節可動域,筋緊張,介護負担度それぞれについてKruskal-Wallis検定を用い,危険率5%を有意水準とした.下肢の他動的関節可動域,筋緊張,介護負担度の経過は注射前,1ヵ月後,4ヵ月後の間に有意差は認められなかったが,個々の項目には著明な改善を認めた.膝伸展位での両足関節背屈可動域は,右側0度,20度,30度,左側5度,30 度,25度と著明な改善が認められ,両足関節背屈運動の筋緊張は注射前,1ヵ月後,4ヵ月後の順にModified Ashworth Scaleにおいて3,2,1と筋緊張の軽減の傾向があった.介護負担度では上着の着脱が5,2,2と介護負担の軽減を示した.ボツリヌス治療は筋緊張や関節可動域の改善に効果をもたらし,介護負担度の軽減にも貢献することが示唆された