著者
佐野 敦子 篠田 まゆ 山田 雅章 滝 欽二 吉田 弥明
出版者
一般社団法人 日本接着学会
雑誌
日本接着学会誌 (ISSN:09164812)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.298-303, 2009-08-01 (Released:2014-07-31)
参考文献数
12

木質構造の接合部に接着剤を併用する場合,現場接着操作終了後の接着性能の変化を知ることは施工管理上重要である。市販の常温硬化型エポキシ樹脂接着剤を用いて作製した接着試験片を施工現場で想定される20℃から60℃で養生し,接着性能試験を行った。さらに同条件で養生したフィルムの動的粘弾性測定から求めた損失弾性率のピーク温度を硬化度の指標として接着性能と硬化度の相関を調べた。動的粘弾性測定の結果から,エポキシ樹脂の硬化は温度の上昇または時間の経過とともに進み,ある程度まで進むと横ばいになること,またその程度は異なる温度で養生した場合は一致しないことが明らかになった。一方,木材接着の接着強さには,接着剤の硬化度の影響がほとんど認められなかった。これは接着剤の硬化が進むと,接着剤の凝集力と木材界面の接着力が木材の凝集力を上回るようになり,接着強さが木材の強度に依存するようになるためである。