著者
篠田 優香 佐伯 緑 竹内 正彦 木下 嗣基
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.179-187, 2021 (Released:2021-08-26)
参考文献数
32

タヌキのロードキル発生状況を,茨城県阿見町から千葉県成田市までの約35 km区間において32ヶ月間にわたり記録した.この間に124件のロードキルが確認され,秋に多く発生していた.また,この約半数が全体の3分の1に満たない水田優占地帯で発生した.ロードキル発生要因を景観構造の観点から解明するため,ロードキル数を目的変数,土地利用割合を説明変数とした偏最小2乗(PLS)回帰分析を行った.その結果,「水田」と「緑の多い住宅地」が,ロードキル数に対する変数重要度の大きい正の要因であることが明らかとなった.さらに,水田優占地帯においては,大区画水田が単一的に広がる景観と,樹林地や住宅地と混在した小区画水田が残存している景観では,ロードキルの発生時期と発生場所に違いが見られた.これらのことから,タヌキのロードキルは,秋季の分散に伴う行動特性に加え,周辺の土地利用割合,タヌキの生息地利用と景観構造との相互作用による影響を受けていると考えられた.