- 著者
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篠藤 涼子 グラシエラ
- 出版者
- 北海道大学大学院経済学研究科
- 雑誌
- 經濟學研究 (ISSN:04516265)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.4, pp.77-90, 2010-03-11
本稿では, 財務諸表監査の制度化過程の1つのモデルとして, 日本におけるその導入過程について整理した。 日本に財務諸表監査が導入されたのは第2次世界大戦後のことである。従来から財務諸表監査の必要性は認識されていたが, 自発的な実施には至らなかった。それが, 戦後経済の変化に伴い, 法的強制力のもと導入された。財務諸表監査の経験を有していない日本では, 財務諸表監査を段階的に導入する過程が採用された。財務諸表監査制度を運用するために, 第1に監査の担い手である専門家としての監査人の育成, 第2に被監査側である企業の受け入れ体制の整備, そして第3にこれらが拠って立つ監査基準の確立が同時に行われた。このような導入過程である会計制度監査の仕組みは, 当時の日本において, 財務諸表監査を行う状況が整っていなかったことを考慮して策定されたものである。そのような日本独自の段階的な導入過程が, 他国にとって財務諸表監査制度を導入する際の検討材料となりうることを考察した。