著者
籠 義樹
出版者
麗澤大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、権利行使価格変動型プット・オプションを用いて、嫌悪施設立地による資産価値低下リスクを補償する手法を考案した。このオプションは、嫌悪施設周辺の住民が将来その資産を、他の条件が同じで嫌悪施設の無い地域と同じ価格で売る権利を付与するものである。こうしたオプションの価値を評価するモデルを構築するとともに、その価値を首都圏において試算した。その結果、オプション価値は立地時点の地価の5.03%であり、これは嫌悪施設の立地した地域と無い地域の地価の、将来の期待値の差額とほぼ等しかった。差額を補償する場合と比べてこのオプションによる補償の利点は、嫌悪施設立地後においても、オプションが権利行使されることによる損失を避けるため、施設立地主体が施設の適切な運営や環境管理に努めるインセンティブがもたらされる点にある。