著者
松宮 佑樹 米澤 智洋
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.87-92, 2022-10-10 (Released:2022-10-31)
参考文献数
20

ω3脂肪酸の一種であるドコサヘキサエン酸(DHA)がヒトの難治性てんかんを部分的に改善することが報告されている。一方、イヌの特発性てんかんに対する効果は明確ではない。本研究では、特発性てんかんのイヌに既報より高用量のDHAを投与し、6か月の観察期間を終えた1例を紹介する。症例は3歳、体重2.0 kgのチワワで、4つの抗てんかん薬を併用されていたが、DHA投与開始前の1か月間の発作回数は4回、前駆症状のみが8回あった。インフォームド・コンセントの後、これまでの抗てんかん薬治療を変えずにDHA製剤を83 mg/kg、1日2回で投与した。投与後、発作回数が徐々に減少し、投与から5~6か月後の2か月間では発作も前駆症状も認められなかった。投与に関連する有害事象は認められなかった。以上より、特発性てんかんの発作頻度の改善に高用量のDHAの投与が有効である可能性が示された。今後、症例の蓄積によって、治療法としての有効性が明らかになるだろう。
著者
内田 萌菜 金 学正 前田 真吾 佐野 孝志 米澤 智洋
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.101-106, 2019-10-10 (Released:2019-10-31)
参考文献数
19

伐採した竹林の有効活用法として、孟宗竹に存在する乳酸菌と竹表面の多孔性による消臭効果が注目されている。本研究では竹粉末を添加した飼料がイヌの糞の臭気に影響を及ぼすか、さらにそれに乳酸菌が関与しているかを検討した。臨床上健康なビーグル犬6頭を実験に供した。洗浄した竹材を平均粒度300 µmで粉砕して密封し、嫌気発酵により乳酸菌を豊富に宿した竹粉末(湿竹粉)、もしくは竹粉末を加熱し、真空吸引法にて乾燥させ、生きた乳酸菌のいない竹粉末(乾竹粉)を餌重量に対し重量比で3%混和した餌を実験犬に投与した。糞便の臭気強度は北川式ガス検知器によるアンモニア、硫化水素そしてメルカプタン濃度の測定および10人のパネラーによる官能試験にて評価した。その結果、湿竹粉、乾竹粉投与群のいずれにおいても、投与7日後には糞臭気中メルカプタン濃度の低下とともに、官能試験による臭気強度、快不快度の有意な改善が認められた。湿竹粉と乾竹粉の投与群間に有意な差は認められなかった。以上の結果より、竹粉にはイヌの糞便の臭気を改善する作用があること、その作用は竹粉中の生きた乳酸菌が主要因とは考えにくいことが示された。