著者
黒沢 香 米田 恵美
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.84-90, 2006

食品偽装を報じるテレビニュースを作成し、大学生153名に見せた。上司の部長に強制され、食肉加工会社の工場長が、不正ラベルを使用、普通の食肉を無農薬飼育の高級品として出荷したとする事件である。上司命令の状況は、強制された本人の釈明か、強制した上司の供述、またはニュースのアナウンサーの言葉として説明された。また営業不振を理由に、部長の命令に、従わなければ工場長から降格される、従えば降格されないとして、または、このような直接的な脅しや約束の言及なしに、不正行動が強制されたことが全員に知らされた。この3×3の要因計画で、強制され犯罪を実行した工場長の責任は、脅しによる強制では相対的に有利に判断され(すなわち、誘導強制バイアス)、約束による利益誘導では、他の話者に比べてアナウンサーによる言葉の場合、とくに不利に判断された。