著者
白井 美穂 黒沢 香
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.114-127, 2009 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
3

本研究では裁判員制度の枠組みから「専門家でない人々による量刑判断の要因」について、前科情報による効果を中心に、しかし今後の研究の土台として他要因についても多角的な検討を試みた。大学生及び社会人を対象とした2つの質問紙実験の結果から、量刑判断の主な要因としては被告人の再犯可能性や事件の悪質性の推測が挙げられ、また厳罰傾向と呼べる個人変数も重要な要因であることが示された。本研究でみられた主な前科情報の効果は、被告人に前科がある場合はより再犯可能性が高く推測され量刑も重くなったこと、また呈示事件が前科から長期間経過しておりかつそれらの事件内容が類似している場合に、事件の種類に関わらず量刑が最も重くなったことが挙げられるが、量刑判断と前科情報の関連は被告人についての情報呈示のあり方によって顕著となる可能性が示された。また本研究では性犯罪である強姦致傷も含め量刑判断において性差は一貫してみられなかったが、参加者の性別とJW得点の交互作用が厳罰傾向を媒介して量刑判断に関連したことを示し、間接的に量刑へ影響を及ぼし得ることを示した。
著者
黒沢 香
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.379-387, 1993-03-10 (Released:2010-07-16)
参考文献数
18
被引用文献数
5 6

Ninety-five Japanese students made judgments of line lengths under different levels of conformity pressure in the Asch/Crutchfield paradigm. Comformity pressure level (whether the preceding four or two ‘others’ unanimously picked a wrong choice) and public self-consciousness interacted; under high pressure, the higher the public self-consciousness, the more conforming responses. Independently, under high pressure, higher self-esteem led to fewer conforming responses. Under low pressure, neither public self-consciousness nor self-esteem had a significant effect. None of the following affected conformity: gender, private self-consciousness, or social self-esteem. In addition, anti-conformity (picking a wrong choice in the control trials where the ‘others’ chose the correct one) was observed, replicating the findings first reported by Frager (1970). A gender by social self-esteem by block (first vs. second half of experimental task) interaction, a gender by self-esteem by block interaction, and a gender by public self-consciousness interaction separately affected the number of anti-conformity responses. Implications for self-consciousness theories are discussed.
著者
ペンロッド スティーブン D 黒沢 香
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.36-62, 2008 (Released:2017-06-02)

この講演ではまず、記録文書研究と心理学者が行った実験研究を用いて、目撃者がおかす誤りの深刻さについての最近の研究を検討する。そして、人物同一性に関する目撃証言における間違いの原因についての最近のよく知られた実験研究およびメタ分析研究を展望する。ここで報告する研究が焦点を当てたのは、犯罪、犯罪者および目撃者のさまざまな特徴、それから犯罪後に起きたこと、警察が用いる同一性証言の聴取手続き、および裁判官や陪審員による目撃証言の正確さの評価である。とくに注目したのは、逮捕写真集、似顔絵と合成写真、単独面通し、ラインナップなどの使用、および目撃者に対する教示などの手続きが、証言の正確さに与える影響についてである。最後に、無実の人を有罪にしないため、米国の心理学者たちが提案した手続き上の変更と、その提案への警察・司法当局の反応について、考察したい。
著者
ペンロッド スティーブン D 黒沢 香
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.36-62, 2008

この講演ではまず、記録文書研究と心理学者が行った実験研究を用いて、目撃者がおかす誤りの深刻さについての最近の研究を検討する。そして、人物同一性に関する目撃証言における間違いの原因についての最近のよく知られた実験研究およびメタ分析研究を展望する。ここで報告する研究が焦点を当てたのは、犯罪、犯罪者および目撃者のさまざまな特徴、それから犯罪後に起きたこと、警察が用いる同一性証言の聴取手続き、および裁判官や陪審員による目撃証言の正確さの評価である。とくに注目したのは、逮捕写真集、似顔絵と合成写真、単独面通し、ラインナップなどの使用、および目撃者に対する教示などの手続きが、証言の正確さに与える影響についてである。最後に、無実の人を有罪にしないため、米国の心理学者たちが提案した手続き上の変更と、その提案への警察・司法当局の反応について、考察したい。
著者
黒沢 香 米田 恵美
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.84-90, 2006

食品偽装を報じるテレビニュースを作成し、大学生153名に見せた。上司の部長に強制され、食肉加工会社の工場長が、不正ラベルを使用、普通の食肉を無農薬飼育の高級品として出荷したとする事件である。上司命令の状況は、強制された本人の釈明か、強制した上司の供述、またはニュースのアナウンサーの言葉として説明された。また営業不振を理由に、部長の命令に、従わなければ工場長から降格される、従えば降格されないとして、または、このような直接的な脅しや約束の言及なしに、不正行動が強制されたことが全員に知らされた。この3×3の要因計画で、強制され犯罪を実行した工場長の責任は、脅しによる強制では相対的に有利に判断され(すなわち、誘導強制バイアス)、約束による利益誘導では、他の話者に比べてアナウンサーによる言葉の場合、とくに不利に判断された。
著者
白井 美穂 黒沢 香
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.114-127, 2009-10

本研究では裁判員制度の枠組みから「専門家でない人々による量刑判断の要因」について、前科情報による効果を中心に、しかし今後の研究の土台として他要因についても多角的な検討を試みた。大学生及び社会人を対象とした2つの質問紙実験の結果から、量刑判断の主な要因としては被告人の再犯可能性や事件の悪質性の推測が挙げられ、また厳罰傾向と呼べる個人変数も重要な要因であることが示された。本研究でみられた主な前科情報の効果は、被告人に前科がある場合はより再犯可能性が高く推測され量刑も重くなったこと、また呈示事件が前科から長期間経過しておりかつそれらの事件内容が類似している場合に、事件の種類に関わらず量刑が最も重くなったことが挙げられるが、量刑判断と前科情報の関連は被告人についての情報呈示のあり方によって顕著となる可能性が示された。また本研究では性犯罪である強姦致傷も含め量刑判断において性差は一貫してみられなかったが、参加者の性別とJW得点の交互作用が厳罰傾向を媒介して量刑判断に関連したことを示し、間接的に量刑へ影響を及ぼし得ることを示した。
著者
杉森 伸吉 安藤 寿康 安藤 典明 青柳 肇 黒沢 香 木島 伸彦 松岡 陽子 小堀 修
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.90-105, 2004-03-24
被引用文献数
1

心理学における研究者倫理への関心が高まる中,日本パーソナリティ心理学会では研究倫理ガイドライン検討特別小委員会を設け,性格心理学研究者倫理の問題を検討した.その中で,目本パーソナリティ心理学会員および他の関連諸学会員の合計262名と心理学専攻の学部生59名を対象に研究倫理観に関するアンケート調査を行った.研究倫理観は基本的に相対的なものであるという認識にもとづき,心理学研究者と学部学生を対象に52項目の倫理的問題に関する許容度判断を求め,その意見分布を示した.全体のうち半数近くの項目で研究者と学生の間に許容度判断の有意差が見られ,いずれも研究者のほうが寛容という傾向であった.また,主たる専門や研究法による倫理判断の相違,性差,研究年数による相違,ならびに基本的倫理観と個別の倫理判断の関連性分析,52の倫理問題に関する許容度判断の主成分分析と主成分ごとの許容度判断などについて検討した.基本的には,各人が研究を行う上で必要な事柄に関しては倫理的判断が寛容になり,研究を行う上で必要性が低い事柄については厳格になる傾向が見られた.本研究の結果は,日本パーソナリティ心理学会員をふくむ心理学者一般について,個別の倫理判断をする上でのひとつの判断基準を提供するものと考える.
著者
白井 美穂 黒沢 香
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.114-127, 2009-10

本研究では裁判員制度の枠組みから「専門家でない人々による量刑判断の要因」について、前科情報による効果を中心に、しかし今後の研究の土台として他要因についても多角的な検討を試みた。大学生及び社会人を対象とした2つの質問紙実験の結果から、量刑判断の主な要因としては被告人の再犯可能性や事件の悪質性の推測が挙げられ、また厳罰傾向と呼べる個人変数も重要な要因であることが示された。本研究でみられた主な前科情報の効果は、被告人に前科がある場合はより再犯可能性が高く推測され量刑も重くなったこと、また呈示事件が前科から長期間経過しておりかつそれらの事件内容が類似している場合に、事件の種類に関わらず量刑が最も重くなったことが挙げられるが、量刑判断と前科情報の関連は被告人についての情報呈示のあり方によって顕著となる可能性が示された。また本研究では性犯罪である強姦致傷も含め量刑判断において性差は一貫してみられなかったが、参加者の性別とJW得点の交互作用が厳罰傾向を媒介して量刑判断に関連したことを示し、間接的に量刑へ影響を及ぼし得ることを示した。