- 著者
-
米道 学
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2010
(目的)房総半島には他の地域から隔離されたヒメコマツ個体群が分布されているが1970年以降マツ材線虫病によってよって急激に個体数を減少させている。1960年代には房総半島には10,000本以上のヒメコマツが生存していたと推定されているがマツ材線虫病等により現在100本以下となった。生存個体はある程度マツ材線虫病に抵抗性を持つ可能性がある。千葉演習林では、保全の一環として実生と接ぎ木による増殖を行っている。今回、実生苗木でマツ材線虫を接種して材線虫抵抗性の検証を行った。また、接ぎ木の成功率が高くないことから挿し木による増殖を試みた。(方法)人工林由来の前沢6号(9本)・前沢9号(17本)・天然林由来の西ノ沢7号(31本)の実生苗木(3家系)で強病原力材線虫(Ka-4)を接種(5,000頭/本)した。対照として千葉演習林抵抗性アカマツ実生苗木(1家系20本)・感受性アカマツ苗木(1家系19本)にも同様に接種を行った。挿し木は、実生苗木の2家系(各40本合計80本)と接木クローン1家系(20本)で行った。挿し床はプランターに鹿沼土を敷き床とした。全プランターはビニール袋に入れて密閉状態とした。密閉状態のプランターの置き場所はビニールハウス内とした。プランターの半分で温床マット(実生各20本合計40本・接木各10本)を敷き半分を露地(実生各20本合計40本・接木10本)とした。さし穂は全て発根促進のためIBA0.4%を5秒間浸漬した。(結果と考察)材線虫を接種した人工林由来(2家系)の枯死率35~56%、天然林由来(1家系)の枯死率の枯死率が55%で対照として接種した抵抗性アカマツの15%より高く感受性アカマツ74%より低い結果となった。ヒメコマツ苗木の抵抗性は抵抗性アカマツと感受性アカマツの中間程度の抵抗性が示唆された。今後、家系数を増やして接種を行い抵抗性の検証をする必要性があろう。挿し木では接木の穂を挿し付けた個体では発根が無く、実生由来の穂を挿し付けた2家系で発根が確認されたが、大半が枯死していた。発根率が温床有りで30~35%、露地で35~45%であった。今回の発根率からヒメコマツの挿し木は可能であろうが、苗の大半が枯死したことから発根後の養苗が課題となった。