著者
糟谷 勇児
出版者
Waseda University
巻号頁・発行日
2004

リカレントネットはフィードバックを持つニューラルネットであり、全結合リカレントネットは、入力層へのフィードバックを除くあらゆる結合を許したモデルである。全結合リカレントネットは脳のモデルとして信頼性があり、人工知能等の分野での応用が期待できる。しかし全結合リカレントネットを応用した研究は少なく、パラメータの設定法や時系列認識における性能などの応用に関する情報が十分に得られていない。そこで本研究では全結合リカレントネットをオンライン文字認識に用いることで、全結合リカレントネットの応用上の注意点や応用可能性を探ることを目的とする。 今回作成した文字認識システムを東京農工大学中川研究室オンライン手書きデータベース「TUAT Nakagawa Lab.HANDS-kuchibue_d-7-06-10」の数字データ6人分300個で評価したところ、最大91%となる認識率を示すなど、全結合リカレントネットが時系列認識に有効であることがわかった。
著者
髙橋 寛治 糟谷 勇児 真鍋 友則 中野 良則 吉村 皐亮 常樂 諭
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.808-822, 2018-10-15

Sansan(株)はクラウド名刺管理サービスを提供している.現在のデータ化精度は99.9%であり,ビジネスユースに耐え得る名刺読み取り精度を実現している.OCRのみではこの精度を実現できず,クラウドソーシングを活用することで高精度と低コストを実現している.本稿では,高精度かつ低コストなデータ化のためのクラウドソーシングの取り組み事例を紹介する.具体的には,(1)スパムワーカと疑われるワーカに対して,警告文を表示することで入力精度を89.4%から91.1%(入力ワーク時)に向上することができること,(2)報酬を2,3倍にした際の作業量の増加率が,それぞれ13.7%,31.8%(選択ワーク時)と必ずしも2,3倍にはならないことが分かったこと,(3)ワークの完了条件を2人のワーカの結果がマッチした時点と3人のワーカの結果がマッチした時点で変えた際に,入力精度に大きな差が見られなかったことなどを報告する. これらは既存の研究で報告された内容から逸脱するものではないが,実際の事業での応用において具体的な数値を元に報告したものとして有用な事例研究である.