著者
糸山 豊
出版者
名古屋工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

若材齢時におけるコンクリートは活発な水和進行過程にあり物性の変化が著しいため、クリープ試験期間中の水和進行を抑制させた状況下において試験を行う必要がある。そこで本年度は,若材齢時の水和組織を極力保持した状態で、それ以上の水和進行を抑制させるために、練混ぜに用いる水の一部を同体積のアルコールで置き換えたコンクリートおよびモルタルを対象として圧縮クリープ試験を行い、アルコール置換による水和抑制効果とクリープ挙動に及ぼす影響について検討を行った。また、異なる応力履歴においてクリープ試験を行い、クリープ挙動の履歴依存性について検討を行った。予備実験の結果から、アルコール置換率40%以下で1ヶ月間養生を行ったコンクリートが若材齢時におけるコンクリートの水和状態を保持していると判断し、置換率はコンクリートでは30%、モルタルではアルコール置換率の違いが強度発現、クリープに及ぼす影響を検討するため30%、40%の2水準設定した。クリープ試験中は温度30℃、湿度98%一定で、てこ式圧縮クリープ試験機を用いて一定応力を載荷してひずみ挙動を測定し、除荷後の回復クリープひずみ挙動も併せて検討を行った。本年度の研究で得られた知見を以下にまとめる。1 試験期間中の水和進行を抑制させてクリープ試験を行った結果、長期材齢時におけるクリープ特性の傾向がみられたことから、若材齢時のクリープは水和進行の影響を大きく受けることが推察された。2 セメント硬化体における微細空隙中の液体の特性がクリープおよび回復クリープの発生機構上、重要な役割を果たすことが推察された。3 練混ぜ水の一部をアルコール置換することで強度発現が小さくなり、水和反応が長期間にわたって抑制された。