著者
朴 兪美 細井 洋海 寺本 愼兒 平野 隆之
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.140, pp.111-124, 2019-03-31

本研究では,制度福祉中心の行政システムの機能不全に対応する地域福祉推進の組織整備に注目し,それが機能するメカニズムとして職員のリーダーシップに着目する.制度福祉の制約を乗り越える,新システムの形成において,その実質的担い手となる自治体職員のリーダーシップは重要な要素となる.本研究では,芦屋市の中間マネジャーの取り組みを取り上げ,リーダーシップが発揮される局面と,その展開に潜んでいるリーダーシップ発揮の環境的条件について探る. 分析方法としては,主に振り返りの手法を用いるが,2 人の中間マネジャーの振り返りを2 人の研究者が促進する形をとる.振り返りを通じて,トータルサポート体制をはじめ,独自の地域福祉推進体制を構築してきた芦屋市地域福祉課の時間的展開を探る.その展開においてリーダーシップが発揮された4 局面を取り上げ分析する. 4 局面は,困難事例からの権利擁護支援の展開,困難事例の支援を通じたトータルサポート体制の実体化,モデル事業を活用した庁内横断的な体制の整備,庁内連携を越えた地域内連携への挑戦,である.分析の結果,リーダーシップによる新規体制づくりと新規体制の運用に求められるリーダーシップとが好循環することと,中間マネジャーのリーダーシップによる人材育成の環境整備が行われることを示す.