著者
永田 和宏 細川 暢子
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

小胞体関連分解の分子機構について、多くの新しい知見を得た。まずEDEMという新規因子を発見し、これがカルネキシンの下流にあって、ミスフォールドしたタンパク質の糖鎖を認識して分解へまわす機構を提唱した。EDEMは小胞体ストレスで発現誘導され、IRE1-XBP1経路で誘導される初めての因子であることも明らかになった。EDEMの分子機構をさらに研究する過程で、 EDEM結合因子として新規小胞体還元因子をも同定し、研究はさらに発展することになった。サイトゾルにおけるポリグルタミン(polyQ)タンパク質の凝集は神経変性疾患などにおいて重要な関わりを持つが、その凝集阻止にサイトゾルシャペロニンCCTが関与していることを示した。CCTはβシートを持つタンパク質のフォールディングを助けるが、その認識部位を明らかにし、さらにβシートに富むpolyQタンパク質の凝集を直接結合することによって阻害できることを示した。特に、FCSなどの比較的新しい方法を用いて、CCTがpolyQタンパク質のオリゴマー形成を阻止しているらしいことも明らかにし、凝集阻止機構を考える上で大切な知見となった。永田らが発見したコラーゲン特異的分子シャペロンHsp47についても、ノックアウト細胞を用いた解析から、Hsp47がコラーゲンの三本らせん構造形成に必須であることを明らかにしたほか、分泌されたコラーゲンが線維形成をできないことを示し、繊維化疾患の治療ターゲットとしてHsp47が有望であるという確証を得た。