著者
宗像 亮 小谷 英太郎 西城 由之 渋井 俊之 細川 雄亮 神谷 仁孝 吉川 雅智 堀江 格 上村 竜太 松本 真 中込 明裕 草間 芳樹 新 博次
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.1113-1118, 2008-12-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
18

症例は29歳,男性.以前より安静時胸部違和感の自覚あり.自宅で昼寝中に意識消失し,家人が心臓マッサージを行い救急車を要請.救急隊到着時は心室細動(ventrlcular fibrillation ; VF)で,除細動後に無脈性電気活動となり心肺蘇生術を継続し当院救命センターへ搬送された.収容後もVFは再発を繰り返し血行動態維持に補助循環〔経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support ; PCPS),大動脈内バルーンパンピング(intraaorticballoon pumping ; IABP)〕を要したが順次離脱できた.洞調律復帰後の心電図でST下降を認めたため冠動脈造影を施行.冠動脈に有意狭窄は認めなかったがアセチルコリン(acetylchoiine ; ACh)負荷試験にて左冠動脈に心電図変化を伴うほぼ完全閉塞にいたる冠攣縮が誘発された.諸検査でほかに基礎疾患を認めず冠攣縮性狭心症によるVFと診断した.カルシウム拮抗薬の投与後発作なく,服薬下で再施行したACh負荷試験で冠攣縮が誘発されないことを確認し,植込み型除細動器の植え込みは行わなかった.VF例では救命することに加え原疾患の診断が重要であり,若年者のVF例で原因診断と後遺症を残さず社会復帰をし得た貴重な1例を経験したので報告する.