著者
森澤 太一郎 小谷 英太郎 神谷 仁孝 宮地 秀樹 渋井 俊之 吉川 雅智 中込 明裕 草間 芳樹 新 博次 梅澤 まり子 津久井 拓
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.79-86, 2013-01-15 (Released:2014-09-12)
参考文献数
20
被引用文献数
1

潰瘍性大腸炎に合併する動静脈血栓症・塞栓症は,頻度は少ないが生命予後にかかわる重要な合併症の1つである.今回,われわれは潰瘍性大腸炎に合併した深部静脈血栓症および肺動脈血栓症に対し,抗凝固療法,血栓溶解療法にて出血合併症なく治療し得た2症例を経験したので報告する.症例1:44歳,男性.30歳より潰瘍性大腸炎全大腸炎型に対しサラゾスルファピリジン,メサラジンで加療中,寛解状態であったが深部静脈血栓症,肺動脈血栓症を発症.ヘパリンによる抗凝固療法,ウロキナーゼによる血栓溶解療法にて症状は改善し,ワルファリン療法に移行した.症例2:26歳,女性.頻回の下痢と血便が出現し,大腸内視鏡検査にて潰瘍性大腸炎全大腸炎型・重症型と診断.メサラジン,プレドニゾロンによる治療を開始.経過中,右鼠径部から中心静脈カテーテル挿入後に深部静脈血栓を認めた.ヘパリンとワルファリンによる抗凝固療法により血栓は消失し,ワルファリン中止後再発を認めていない.潰瘍性大腸炎はメサラジンの内服にて寛解状態を維持している.炎症性腸疾患に伴う血栓症は,発症機序に不明な点が多く,原疾患に起因する出血を危惧して抗凝固療法,血栓溶解療法が躊躇される例も多い.しかし,炎症性腸疾患では血栓症の合併による死亡率が高いため,常に血栓症の存在に留意し,血栓症を発症した場合には出血のリスクを考慮したうえで,積極的な抗凝固療法,血栓溶解療法を迅速に行うことが重要と考える.
著者
小谷 英太郎 新 博次 井上 博 奥村 謙 山下 武志
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.195-208, 2013 (Released:2015-07-27)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

心房細動症例の抗凝固療法において,ブコロームがワルファリンの減量目的にしばしば併用される.しかし,我が国のワルファリン治療におけるブコローム併用の現状と実際のワルファリン投与量に与える影響に関する全国規模での検討はなされていない.そこで,J-RHYTHM Registry登録時にワルファリン投与中であった6,932例のブコローム併用の有無を調査し,その施設別および地区別のブコローム併用率とワルファリン投与量との関連を検討した.ブコロームは158施設中64施設(40.5%),計297例(4.3%)に併用され,ブコローム併用例のワルファリン投与量は非併用例の約半量であり,有意な減量効果を認めた(1.4±0.7mg/日vs. 2.9±0.4mg/日,p<0.001).各施設のブコローム併用率は施設間で大きな差があり(0~88.9%),施設別平均ワルファリン投与量と負の相関を認めた(r=-0.59,p<0.001).地区別の併用率は,北越地区が27.3%と最も高く,九州地区と中国地区は1%未満と低率であった.全国10地区間に有意な差を認め(p<0.001),地区平均ワルファリン投与量と負の相関を認めた(r=-0.71,p=0.021).ブコローム併用療法は,有意なワルファリン減量効果を認め,その併用率には大きな施設間差,地区差が存在した.
著者
栗田 明 品川 直介 小谷 英太郎 高瀬 凡平 草間 芳樹 新 博次
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.63-69, 2010 (Released:2010-03-25)
参考文献数
14
被引用文献数
4 4 2

目的:特別養護老人ホーム(特養)において超高齢者の看取りケアを行う施設が増加しているが,基準となる指針は各事業所により異なる.また入所者の身体所見の変化などで病院での治療を家族らが希望するケースがあるが,終末期ケアに関するデータに乏しい.そこで看取りケアをした症例と,入院依頼症例の予後について比較検討した.方法:対象は平成20年2月1日から平成21年5月20日までに看取りケアを実施した5例(99±10歳)と当施設に入所中に病態が急変したため提携先の病院に入院加療した48例(89±15歳)である.看取りケアをした症例は当施設において通常のごとく有熱時や心不全の急性増悪に対する医療看取りケア(有熱時には通常行っている摂食制限,水分多め,血管拡張剤,抗生剤などの経口投与)を行った.また枕元での癒しの音楽を毎日約60分間流した.他方,病院入院症例は入院先の医師指導による通常の治療を実施した.結果:看取りケア症例は平均300±70日で5例全例が生存し,CRPは平均10±12 mg/dl から1.2±0.5(p<0.05)に低下し,血清アルブミン値(Alb)は2.7±1.6 g/dl から3.5±2.6に,BMIも16±1.6から18.3±0.75(p<0.05)に上昇した.他方,入院症例は48例で,そのうち32例は平均120±26日の入院加療で当施設に退所することが出来た.しかし16例は平均100±36日の入院加療で死亡退院(誤嚥性肺炎;11例,心不全;3例,消化器疾患;2例)であった.結論:百寿者といえども高齢を考慮した看取りケアを行えば急性増悪期を克服し,生命力をさらに発揮することが出来る.しかし,慢性基礎疾患の急性増悪や肺炎などで入院加療した約1/3の症例は死亡退院であった.これらの事実を認識しながら家族らとの話し合いなどを通じて入所者が終末期を迎えられるよう看取りケアに励むべきである.
著者
宮地 秀樹 小谷 英太郎 岡崎 怜子 吉川 雅智 松本 真 遠藤 康実 中込 明裕 草間 芳樹 磯部 光章 新 博次
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.5, pp.1388-1390, 2011-05-10
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

症例は21歳,女性.不明熱のため各種精査を行うも原因を同定できず.骨病変精査目的で施行したFDG-PET/CTにて大動脈弓部に異常集積を認め,早期の高安動脈炎と診断した.狭窄閉塞,拡張病変が明らかでない早期高安動脈炎の早期診断は現在のガイドラインでは困難である.しかし高安動脈炎は若年女性に好発し,重篤な心血管合併症が生じることからFDG-PET/CTによる早期診断が重要と考え報告する.<br>
著者
宮地 秀樹 小谷 英太郎 岡崎 怜子 吉川 雅智 松本 真 遠藤 康実 中込 明裕 草間 芳樹 磯部 光章 新 博次
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.5, pp.1388-1390, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

症例は21歳,女性.不明熱のため各種精査を行うも原因を同定できず.骨病変精査目的で施行したFDG-PET/CTにて大動脈弓部に異常集積を認め,早期の高安動脈炎と診断した.狭窄閉塞,拡張病変が明らかでない早期高安動脈炎の早期診断は現在のガイドラインでは困難である.しかし高安動脈炎は若年女性に好発し,重篤な心血管合併症が生じることからFDG-PET/CTによる早期診断が重要と考え報告する.
著者
岡田 薫 草間 芳樹 小谷 英太郎 石井 健輔 宮地 秀樹 時田 祐吉 田寺 長 中込 明裕 新 博次
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.373-378, 2008-04-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
10

症例は66歳,女性.既往に胆石症あり.呼吸困難を主訴に当科を受診.低酸素血症(PaO2 61mmHg),血清Dダイマー高値(10.35μg/mL),心臓超音波検査で右心室の拡大,胸部造影CTにて両側肺動脈に血栓を認め,肺血栓塞栓症と診断.ウロキナーゼ240,000単位/日,ヘパリン12,000単位/日の持続静注を開始.翌日の肺動脈造影検査にて両側肺動脈に血栓を認め,血栓溶解療法,血栓破砕,吸引術を施行し,右下肢深部静脈血栓に対して一時的下大静脈フィルターを挿入した.ヘパリン持続静注により第12病日に血小板数が11.9×104/μLに減少,Dダイマーが124.4μg/mLまで上昇し,下大静脈造影検査でフィルター遠位部が血栓により完全閉塞していた.ウロキナーゼを増量しても改善せず,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)に伴う血栓症を疑い,第18病日にヘパリンを中止したところ,血小板数31.9×104/μL,Dダイマー1.54μg/mLに改善し,フィルター内の血栓は消失した.抗ヘパリン第4因子複合体抗体が陽性であり,血栓症を伴ったHITと診断した.ヘパリンは循環器疾患の診療において広く使われているが,重大な合供症であるHITに関してはいまだ十分に周知されていない.ヘパリンの使用中には,血小板数の推移を観察し,HITが疑われた場合,直ちに適切な対応を行うことが必要である.
著者
栗田 明 品川 直介 小谷 英太郎 岩原 真一郎 高瀬 凡平 草間 芳樹 新 博次
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.336-343, 2012 (Released:2012-12-26)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

目的:2年前の本誌に我々の超高齢者の看取りケアについて報告した.時間の経過とともに症例も増加しているので,その後の経緯と常勤医の立場から特養における医師の役割について私見を述べる.対象および方法:平成20年2月1日から平成23年6月下旬までの間に看取りケアを実施した7例(101.5±4歳,女)と当施設に入所中に病院に入院加療を要請した98歳未満の130例(87±6.5歳,男/女:42/88)及び同時期に入院加療を要請した98歳以上の12例(101.8±7歳,男/女:2/10)である.結果:看取りケアを実施した7例中4例は480±297日で死亡した.現在3例に看取りケアを実施中である(805±662日).入院加療を依頼し当施設へ帰所出来た症例は93例(71.5%,86.7±10歳,男/女:27/66)で,死亡退所例は37例(28.5%,86.4±11歳,男/女:15/22)であった.生存退所例は誤嚥性肺炎についで消化器疾患が多かったが,死亡退所例は誤嚥性肺炎についで心不全が多かった(p<0.05).98歳以上で看取りケアにエントリーしない症例は15例で,12例は入院加療が必要になった.死亡退所例は9例(75%)で,98歳未満の入院症例に比べて多かった.103歳の左乳がん例に摘出術を行い成功し3日後に退院出来た.しかし看取りケア開始90日後に死亡した.当施設の入院加療しない入所者の死亡率は15.3%で全国平均の37.2%に比べて低かった(p<0.01).総括:特養で看取りケアをスムースに行うには病診連携と職員の日頃からの医学的な知識の蓄積が重要である.特養に勤務する医師はこれらの諸点に留意しながら職員の研修や指導を行いながら終末期ケアに取り組むことが肝要である.
著者
宗像 亮 小谷 英太郎 西城 由之 渋井 俊之 細川 雄亮 神谷 仁孝 吉川 雅智 堀江 格 上村 竜太 松本 真 中込 明裕 草間 芳樹 新 博次
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.1113-1118, 2008-12-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
18

症例は29歳,男性.以前より安静時胸部違和感の自覚あり.自宅で昼寝中に意識消失し,家人が心臓マッサージを行い救急車を要請.救急隊到着時は心室細動(ventrlcular fibrillation ; VF)で,除細動後に無脈性電気活動となり心肺蘇生術を継続し当院救命センターへ搬送された.収容後もVFは再発を繰り返し血行動態維持に補助循環〔経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support ; PCPS),大動脈内バルーンパンピング(intraaorticballoon pumping ; IABP)〕を要したが順次離脱できた.洞調律復帰後の心電図でST下降を認めたため冠動脈造影を施行.冠動脈に有意狭窄は認めなかったがアセチルコリン(acetylchoiine ; ACh)負荷試験にて左冠動脈に心電図変化を伴うほぼ完全閉塞にいたる冠攣縮が誘発された.諸検査でほかに基礎疾患を認めず冠攣縮性狭心症によるVFと診断した.カルシウム拮抗薬の投与後発作なく,服薬下で再施行したACh負荷試験で冠攣縮が誘発されないことを確認し,植込み型除細動器の植え込みは行わなかった.VF例では救命することに加え原疾患の診断が重要であり,若年者のVF例で原因診断と後遺症を残さず社会復帰をし得た貴重な1例を経験したので報告する.
著者
吉田 悠鳥 香川 正幸 後藤 眞二 鈴木 哲 栗田 明 小谷 英太郎 新 博次 高瀬 凡平 松井 岳巳
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.43, no.SUPPL.1, pp.S1_4-S1_10, 2011 (Released:2012-12-05)
参考文献数
11

人体にやさしい小電力のマイクロ波レーダーを使用して, 高齢者を対象とした非接触かつ非拘束な呼吸·心拍数モニタリングシステムを開発した. このシステムを実際に特別養護老人ホームで評価し, 高精度の呼吸·心拍数モニタリングシステムの実現とその有用性を確認した. 本論分では, 特に心拍信号の実時間上での迅速抽出について述べる. 寝具用マットレスの下部に周波数の異なる2つのレーダー装置を設置し, 呼吸·心拍に伴う体表面の微振動をドプラレーダーにより計測する. 得られる生体信号には, 呼吸動, 心拍動, 雑音が混在している. この中で安静時に, 最も振幅の大きな信号として現れる呼吸信号に着目し, 実時間上における信号平滑化の移動平均法を用いて呼吸信号を推定し, 原信号からその呼吸信号を減算することにより心拍信号, 心拍数を高精度に抽出した. 一方で, 高齢者の介護では, 在宅の場合も施設介護の場合も高齢者の状態変化の早期検出と介護者の身体的精神的負荷の軽減が求められている. 高齢者にとって拘束感, 違和感がない本システムは, 新しい高齢者見守り支援システムとして期待される.
著者
新 博次
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.125-132, 2018-02-15 (Released:2019-04-01)
参考文献数
22