- 著者
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川上 進
松岡 雅裕
岡本 浩明
細木 信也
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
- 巻号頁・発行日
- vol.83, no.12, pp.2786-2797, 2000-12-25
- 被引用文献数
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3
歩行や車の運転に不可欠な空間視は, 網膜に映るオプティカルフローに基づいて行われることを, 心理学者のGibsonが50年ほど前に見出している.この空間視には, 「自己移動方向の検出」と「環境を構成する平面の空間認識(平面の3次元方位と奥行)」がある.神経生理学が進展し, 自己移動方向をオプティカルフローから検出する細胞が大脳の運動視中枢(MST野)で見出されている.しかし, オプティカルフローに基づいて平面の空間認識を行う細胞は, Gibsonの心理学的発見にかかわらず報告されておらず, またモデルの報告もない.本論文では, 3種類の平面パラメータ(平面の3次元方位, 平面に到達するまでの時間, 平面までの最短距離)を, オプティカルフローを統合して検出するアルゴリズムを報告する.到達時間と方位は複比変換と極変換を用いて, また最短距離と方位は小円変換を用いて検出される.次に, これらアルゴリズムと前報の「大脳MT野で局所運動を検出する神経網モデル(Vision Research, 1996, 1999)」に基づいて, 網膜からMT野を経てMST野までの神経網をモデル化する.また, そのモデル神経網(0.16億個の細胞とそれを結ぶ4.6億本の神経網で構成される)をコンピュータ上に構築して, 到達時間と方位を正しく検出できることを示す.