著者
細田 満和子
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.64-73, 2010
被引用文献数
1

本稿は健康に関する社会運動という視座を援用しつつ、日本におけるリハビリ診療報酬削減政策撤廃をめぐる社会運動を事例に、人々の運動による保健医療の改革の可能性を論じるものである。健康に関する社会運動は、近年ブラウンらによって提唱された概念で、医療社会学と社会運動論のギャップを埋め、市民の健康に関する運動による社会変革の可能性を示すものと把握できる。日本では全ての国民は公的医療保険に加入し、診療報酬によって規定された医療ケアを受けることができるが、2006年4月厚生労働省は、公的保険によってカバーされるリハビリテーション医療の日数の上限を原則180日と制限した。これに対して患者や医療関係者から大きな反発の声が上がり、それは全国的な運動となり、行政に再改定させる展開となった。本稿ではこの運動の過程を概観し、一定の成果を挙げた要因を分析し、そうした運動が医療改革に反映されるような医療ガバナンスの可能性を検討する。