著者
細野 美幸
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.62-72, 2009-03-30 (Released:2012-02-22)
参考文献数
26
被引用文献数
3 2

本研究は, 子どもは関係類似性を手がかりに類推のベースを想起するか否か, 関係類似性を手がかりに類推のベースを想起する場合いつ頃から可能か, について検討した。子どもにとって新しい概念(ターゲット)となじみのある概念(ベース)からなるアナロジーを用意し, 5歳前半から7歳後半の子ども184名に対して提示した。その際, ターゲットのみ提示するベース非明示条件と, ベースを提示してからターゲットを提示するベース明示条件を設けた。両条件ともに4つ組みのカード選択課題を行い, カード選択にあたっての理由づけを求めた。課題成績および理由づけ分析の結果から, ベースを明示されていれば6歳前半から関係類似性を手がかりに類推するようになるが, ベースを明示されていないと幼児にとっては難しく, 7歳前半頃から関係類似性を手がかりに類推のベースを思い出して類推するようになることが示された。このような発達的変化は, 抽象化された関係知識の獲得と関連するものと考えられる。